生成AIの大きな論点

昨年から毎週仕事で東京に行くことになり、帰りには必ず東京駅丸の内にある丸善に寄ってきます。

丸善3階のIT関連一般書の平場には、これまでWeb3.0やメタバースなどの最新IT技術の書籍が置かれていましたが、今年に入り、ChatGPT関連の書籍が目立ってきました。

書籍だけでなく、一般雑誌、経済雑誌なども競ってこのテーマを特集して発刊されています。それらの中で、科学雑誌『Newton』の最新刊にはChatGPTの衝撃が特集されています。 

さっそく購入しました。特集の中で、ChatGPTが応用している、単語どうしの”距離”をはかって文章を理解する革命的な技術「Transformer」が図解されています。科学的視点でchatGPTをわかりやすく解剖する、さすが『Newton』です。

第4次AIブーム

ChatGPTをはじめ、AI技術の進歩は目覚ましく、第4次AIブームと言われています。

人間のように自然な会話ができる生成AI(AIチャット)。この生成AIは、検索エンジンのように収集した情報を提供するだけでなく、課題に対するアドバイスを提供したり、いろいろな文章を要約してくれたりします。仕事に活用すると業務の効率化が図れることがわかり、ITにあまり強くない人も簡単に利用できることから多くの人が利用するようになっています。

一方で、最新のGPT-4は嘘をつく頻度が大幅に改善されたようですが、まだ生成AIの回答は必ずしも100%鵜呑みにはできないことや、個人情報の流出リスク、画像生成AIでの著作権などが懸念されています。

(出典:Job総研による『2023年 AIチャットの意識調査』)

生成AIに人間の仕事を奪われるのでは?

そして大きな論点になっているのは、

生成AI(AIチャット)に人間の仕事を奪われるのでは?ということです。

今から10年以上前、画像認識や将棋プロジェクト、IBMのWatsonなど、ディープラーニングを活用したAIの活用事例が一気に台頭し、第3次AIブームが起こりました。このときも、「AIによって人間の仕事を奪われるのでは?」という大きな不安の声があがったのを思い出します。

ニュートンの最新号を監修している松尾豊東大教授は、このように言っています。

人と同等の知能をもつ汎用型AIが開発されれば、「これまでは、人の仕事がAIに奪われることはないだろうと思っていました。しかし今回は、本当にAIに仕事が奪われる可能性があると感じています」。

自然言語モデルではスケール則*が働き、次第に人と同等の知能をもつ汎用型AIに進化していくと特集に書かれているのを読むと、松尾教授の言葉にも頷かざるを得ません。

 

*スケール則

自然言語モデルでは、自然言語処理モデルのサイズ(=パラメーター数)や、データセットのサイズ、トレーニングに使用される計算量が増えるほど、より高い性能を発揮できる、という法則を指す。

私たちが生成AIを利用すればするだけ、学習量が増えて賢くなる生成AI。

今後、間違いなく生成AIと共存していく時代において、私たちも賢くなり、私たちにしかできないことは何かを考える、「どうする人間様?」が問われているようです。