DX推進に必要な考え方とは・・・

今年6月からNPO法人ITコーディネータ協会の副会長になり、

協会の運営と全国のITコーディネータ(ITC)のための仕事に携わるようになりました。

ITCになって21年。ITC制度を愛する私にとって、「ど真ん中の仕事」です。

DX推進者としてITCに対する期待が高まっている今、更なる社会の評価が高まることを願い、

このブログを書いています。

中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コード 実践の手引き

国が公表している二つの資料に、バックキャストして考えることについての重要性が書かれています。

一つは、経済産業省が2020年11月に出した読みやすいDXの手引きとしての「中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コード 実践の手引き」です。次のように書かれています。

「実現したい未来=経営ビジョン(5年後・10年後にどんな会社になっていたいか)をしっかりと描き、その実現に向けて関係者を巻き込みながら、現在の状況と目指すべき状況の差を埋めるために解決すべき課題を整理し、デジタル技術を活用しながらこれらの課題解決を通じて、ビジネスモデルや組織・企業文化等の変革に戦略的に取り組んでいくことが求められます」。

経営デザインシート

もう一つは、2017年に内閣府の知的財産戦略本部から公表された「経営デザインシート」です。

企業等が、将来に向けて持続的に成長するために、価値創造メカニズムをデザインして、ありたい姿に移行するために活用するものです。

この経営デザインシートの開発に関わってきた森俊彦さん(日本金融人材育成協会 会長)は、自著『地域金融の未来』の中で、経営デザインシート作成のポイントとして、このように書いています。

「将来、5年後、10年後の未来社会はどうなっていて自社はどんな価値を提供しているかを具体的にイメージし、未来からバックキャストして考えることである」。

DXの本質「X(トランスフォーメーション)」

DXの本質である「X(トランスフォーメーション)」を考えるとき、

バックキャスト思考は、とても大事です。

5年後又は10年後、自社はどうなっていたいのか。顧客にどんな価値を提供したいか。このことをイメージすることから始め、現状の延長線上に自社の未来があるのだろうか、と問い直すことからX(トランスフォーメーション)はスタートします。

DX認定を受けた株式会社ヒサノさんの事例

熊本県で運送業を営んでいる株式会社ヒサノさん。昨年、経済産業省のDX認定を受けました。

売り上げ8億円、従業員96人で、社長と夫人の専務との2人3脚で経営しています。

1人のドライバーがトラックで荷物を運ぶルート配送などとは異なり、

複数の社員がチームを組んで、半導体の製造機器やピアノなど重たく精密な物品を運び、設置作業までを担ったいます。このユニークなビジネスモデルで10%を超える高い収益性を誇っている会社です。

この会社を支援したITコーディネータ(中尾克代氏)と社長夫妻の対話の様子は、

これからDX認定を目指そうとする企業には、非常に参考になります。

  • ITC:10年先にどういう会社になりたいですか
  • 社長夫妻:10年先ですか……そこまでは考えていなかったな
  • ITC:「戦略マップ」などで整理しながら、10年後をイメージしてみましょう
  • 社長夫妻:実は今、福岡に倉庫を新たに建てようとしているんです。それが完成したら、倉庫から運送まで一貫した仕事ができる「総合物流会社」を目指したいな
  • ITC:今の仕事のやり方の延長線上で行けそうですか

「今の仕事のやり方の延長線上で行けそうですか」これがキラークエスチョンとなり、

そこから社長夫妻の問題意識が噴き出し、DX推進のプロジェクトが大きく動き出していったようです。

なりたい未来とのギャップから経営課題を見える化。経営課題を解決するためのあるべき業務の姿を構築、これをサポートするシステム開発。ITCの支援を受けながら、展開していった事例です。

ITコーディネータ(ITC)へのエール

ITコーディネータ(ITC)は、PGL(プロセスガイドライン)を拠り所として、中小企業を支援します。

このPGLは、まさにIT経営を推進するためのバックキャスト思考のプロセス体系となっています。

DX推進者として期待の大きいITCは、

もう一度、素晴らしいプロセス体系であるPGLの理解を深め、ITCらしい支援をして欲しいと願っています。