今年のキーワードの一つに「デジタル化」が挙げられます。
新型コロナウイルス感染で日本の日常生活、経済状況が大変な状況に陥りました。コロナウイルス感染対策の遅れの反省から、
菅総理が最重要施策と打ち出したのが、デジタル庁を創設して
「国・地方行政のデジタル化を推進する」でした。
デジタル化とは何をすることなのか。これまで言われてきた「IT化」、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とどのように違うのでしょうか。
デジタル化ということについて
「デジタル」とはいったい何でしょうか。
私たちが生活する現実の世界における時間や温度、明るさや音の大きさなどの物理現象や、
誰かと会話するなどの人間の営みは、連続量で表すアナログです。
しかし、アナログのままではコンピュータで扱うことはできません。
そこで、コンピュータで扱えるデジタル、すなわち0と1の数字の組み合わせに変換する必要があります。
つまり、デジタルとは、アナログな現実世界をコンピュータで扱えるカタチ、
すなわち、デジタルで表現し直すことを言います。
では、なぜデジタル化するのでしょうか。
コロナ禍において、多くの企業がテレワーク導入を進めてきました。
テレワークを実施するための一つの大きな要件は、
業務を行うための書類(データや情報)がデジタル化されていることです。
紙種類は、スキャナーやOCRでデジタル化します。
デジタルであることは、どんな価値をもたらすのでしょうか。
ものごとやできごとをコンピュータで扱い、処理することによって、
ビジネスにおいて以下のような、これまで多くの時間をかけていた業務が短時間でできるようになったり、
出来なかったことができるようになったりします。
- 紙(FAXなど)で処理していた受発注業務が短時間でできるようになる
- 業務の進捗、人の動き、ビジネスの状態が、リアルタイムに「見える化」される
- 顧客の行動(いま、どこで、何をしているのか)が分かるようになり、タイムリーに適切な商品・サービスを提供できるようになる
- データ分析により、膨大なデータの中にビジネスに役立つ規則や関係を見つけることができる
二つのデジタル化
デジタル化には2つの異なった意味を持った言葉があります。
ひとつは、「デジタイゼーション」です。
紙種類をスキャナやOCRでアナログからデジタル変換することによって、
上記したように業務の効率化や企業の価値を向上させるためのデジタル化です。
もうひとつは、「デジタライゼーション」です。
これはデジタルフォーメーション(DX)と言われているデジタル化です。
例えば、音楽好きなユーザに対して、
これまではCDの販売やネットからのダウンロード・サービスを提供していたビジネスモデルを、
ストリーミングと月額定額(サブスクリプション)という新しいサービス形態を提供することによって、
いつでも好きなときに、多くの曲を聞きたいというユーザーニーズに応えるビジネスモデルに変革できます。
このような事例のデジタル化は、
これまでのビジネス・モデルを変革し、これまでに無い競争優位を実現して、
新しい価値を生みだすデジタルトランスフォーメーション、DXと言われます。
ちなみに、経産省のガイドラインによると、
DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、
顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、
業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されています。これら2つのデジタル化は、目指すべきゴールが違うだけのことです。企業の置かれている経営状況や方針により、どちらのゴールに向かうべきかは違ってきます。
IT化、IT戦略との違いについて
最近はデジタル化という言葉が多用され、
これまで使われてきたIT化とどう違うのだろうか、という声が聞こえてきそうです。
結論から言えば、どちらも同じ意味合いで使われるということです。
何を目的とするかの違いにより、どちらも二つの方向性があるだけです。
IT化又はIT利活用とは、ITを導入して利用し、運用してITのサービスを活用することを言います。
IT活用によって経営の課題を解決したり、企業の付加価値の向上を目指すものです。
ときには、ビジネスモデルを変革することを目的にすることもあります。
IT利活用による企業の戦略をIT戦略と言いますが、
大別すると「攻めのIT」と「守りのIT」の2つに分類することができます。
攻めのITは企業価値向上や競争力強化に直接的に繋がるIT戦略のことを指し、
守りのITは社内業務効率化、利便性の向上に繋がるIT戦略のことを指します。
攻めのIT、IT戦略はDXに近いものと言うことができるでしょう。
中小企業支援において
今日まで従業員を雇用し、事業を継続してきた中小企業・小規模事業者の方は、
企業独自の強みを持っています。
コロナ後においても強みをさらに強化し、
コアコンピタンス化して同業他社を寄せ付けない競争力を獲得できるようにするにはどうすればよいのか。『現場力を鍛える』(遠藤 功著)の中で、強い現場を作る7つの条件について、
著者はこのように書いています。
強い現場を作る7つの条件の一つに現場の見える仕組みがあります。
プロセス、問題点、結果、知恵の4つを見える化することによって、現場の進化が生まれてくると。
現場の見える化の仕組み構築には、
プロセスや問題点の見える化にはIoTが有効であり、
結果の見える化にはKPI(評価指標、数値目標)のモニタリングとコントロールが必要です。
これらを実現するためには、データのデジタル化とIT化、IT戦略が必須となります。
中小企業・小規模事業者の方が、
デジタル化、DXは自分たちに関係ないよと後ろ向きにならないために、
逆に風潮に流され、身の丈を超えた投資をしないために、
私たちITコーディネータは、
これらの言葉の意味するところを自分自身で整理し、正しく伝えることは大切だと思っています。。
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