ITコーディネータを認定するケース研修で受講生が思考停止に陥る演習課題があります。
抽象化という考え方をこの演習課題を事例として、お話しします。
ケース研修では、IT経営の考え方とIT経営を推進するプロセスを学習します。
目指すべき経営ビジョンを設定し、現在の経営環境とのギャップを認識して課題を抽出。
そして課題の解決策を実行して経営ビジョンを実現する。
これは、IT経営を推進するための経営戦略策定の大まかなプロセスです。
SWOT分析とは
一つ目の思考停止する演習課題は、SWOT分析による経営環境分析です。
経営の内部環境の情報をバリューチェーンモデル、
外部環境は5FやPESTというフレームワークで洗い出し、
洗い出した情報を「強み(Strengths)」と「弱み(Weaknesses)」、
「機会(Opportunities)」と「脅威(Threats)」に整理します。
そこから、整理した内部環境の情報に着目して情報をカテゴリー化したり、
「Why-Why-Why」と因果関係の探索を繰り返しながら事象間の関係性を見たりして、
企業の本質的な強みと弱みを抽出します。
また外部環境情報からは、戦略に関係する本質的な機会と脅威を見つけ出します。
私がインストラクターとして実施しているケース研修では、
SWOT分析の演習をとおして、事象を抽象化することによって、
個別具体化された事象の本質を見つけることを教えています。
本質的な事象を見つけないと、次のステップである課題の抽出も上手くできません。
しかし、強み、弱み、機会、脅威を単に整理するだけで終わり、
ここで思考停止してしまう場合が多いのです。
フレームワークという枠から抜け出す
もう一つの思考停止する場面は、
クロスSWOT分析というフレームワーク(型、枠)を使って課題を抽出する演習課題のときです。
下図のように、SWOT分析で整理された個別具体的な事象をクロス、例えば強みと機会をクロスして、
事業機会を自社の強みで最大限に活用するためにはどのような課題が考えられるかを考えます。
同様に、強みと脅威、弱みと機会、弱みと脅威についてもクロスして課題を抽出していきます。
しかし、大抵の場合、途中で思考が停止してしまいます。
それはクロスSWOT分析というフレームワークの中で思考しているからです。
枠(フレームワーク)から抜けでて、
具体的事象を俯瞰的に見る、一段上から離れた視点から眺めるという、
抽象化して考えていないからです。
具体的な個別事象の本質を見る必要があるのです。
抽象化する力
抽象化の方法とは、
・「Whyを問う」こと
・「メタで考える」こと
・「全体を俯瞰する」こと
いずれも、次元を上げた視点で眺める、考えることです。
(以上、『具体⇄抽象トレーニング』(細谷功著)より)
経営戦略策定のの上流では抽象化する力は非常に大事なスキルです。
そして、下流になれば、豊富な知識と経験による具体化する力が必要となります。
ともに必要な力ですが、知識と経験にもとづく具体化する力は今後AIに取って代わられることを考えると、
抽象化する力がより重要になってくるでしょう。
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