社長失格!

 

起業して会社を設立し、独り親方で事業をやっている人も社長と呼ばれるが、

ここでは人を雇用して会社を経営している人を社長ということにする。

では、社長の最も大事にすべきこと、心構えとは何だろうか?

 

Tさんとの会話

今から6年前の平成26年(2014)の5月頃。68歳のときだった。

取引先の取締役だったTさんから私の年齢を考えてのことだったと思うが、唐突に言われた。

「横屋さん、会社どうするの」

「社員は会社を継ぎたいと言わないし、継がせたい子供もいない。

事業を誰かに又はどこかの会社に引き継いでもらうことを考ていますよ」と答えた。

そのときは、一番苦しかった平成20年(2008年)のリーマンショックを乗り越え、

利益も順調に出ていて借入金の完済も間近という経営状況になっていた。

一方で、システム開発の経験が豊富な社員を抱えていたが、

経済環境やシステム開発の需要に経営が大きく影響される企業体質でもあった。

 

事業承継

私の返答を聞いたTさん。

熟考する暇も与えずの感で、一気呵成に事業承継の話し合いを進めてきた。

私からは「社員の待遇は今以上に良くして欲しい」

「新ナレッジ21の経営を見届けたいので、しばらく役員として残りたい」と要望を出した。

私の要望は承諾され、事業承継する決断をした。

経営者は孤独だと言うが、まさに誰かに相談することもなく、自分独りでの決断だった。

生み育てた会社への愛着は大きい。

今後も会社経営が順調にいけば、会社を手放すのはもったいない。

などなど、決断をした後もこれらのことが脳裏を駆け巡っていた。

同年8月には私は代表権を返上し、新ナレッジ21へと船出することになった。

 

創業の思い

私がサラリーマンのとき或る人からこんなことを言われた。

「金を儲けるんだったら創業して社長をやることだ」

「自分の給与は自分でなんとでもなる」。

決してこんなことを聞いたからナレッジ21を創業したわけではない。

サラリーマン時代、他人の意思で自分の人生を左右された経験をしてきたため、

仕事人生の最後は創業したい、社長として手作りの事業をしたいとの思いで創業した。

平成18年(2002年)、56歳のときである。

創業時は出資すべき資本金もなく次女の結納金で何とか手当できたが、

会社経営を心配する家内を一日も早く安心させてやりたいという気持ちで一杯だった。

一方で創業してみると、

苦しいときも私についてきてくれた社員との一体感(One Team)を感じたり、

社員といっしょに将来の目標を描いたりと楽しいこともあった。

苦しいことが多い経営。しかし、それ以上に楽しみも大きいのが経営ということを実感できた。

 

失格社長

元伊藤忠商事社長、中国大使の丹羽宇一郎さんの著書『社長って何だ!』には、

社長としての心構えが書かれている。著書の言う心構えに同感すること多い。

こんな人は社長をしていてはダメだと。

私もこんな人の1人かも知れないと最近思うようになった。

社長がそれなりの給与をもらえるのは、誰のおかげ?社員のおかげである。

では社員のため、社員が安心して働ける会社にするため、

社長としての仕事を全力でしてきたかと自問自答してみると、

会社経営とITコーディネータ活動との二束の草鞋を履いていた自分がいたことに気付く。

私は失格社長だった。

今、新ナレッジ21は社員も増え、売上・利益も順調に伸ばし、

企業年金を会社の掛金で積み立てるほどになった。

私が社長のときには出来なかった。事業承継は正しい決断だったと今思える。

現在、こんな失格社長の経験をITコーディネータ活動や創業支援に活かしている。

失格社長も捨てたものでもない。

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コメント: 1
  • #1

    内山です (火曜日, 04 2月 2020 16:27)

    近くの企業で、90代半ばの社長が頑張ってます。後継者の息子さんが
    いるのに、まだ頑張ってます。
    年齢的に、
    いつまでも出来る訳じゃないと思うのですが
    頑張ってます。
    発展的事業継承ができて、
    現在頑張ってくれてるのでしたら、
    横屋さんの判断が良かったのでは。

    心配する事なんかないけど、
    近くの企業は誰に、どうするのか⁉️
    大変だけど、1人社長がいいね。
    横屋さん仕事楽しそう。