課題の導き出し方、二つの方法

「製造現場の加工時間が正確に把握できていないため、

製造原価の精度が悪く、正確な見積もりができないという課題がある。

この課題をなんとかしたい」。

通常、このような形で課題という言葉が使われることが多い。

表現された内容は、発生している好ましくない事象(問題)であり、課題ではない。

ビジネスの現場では、問題と課題を明確に分けないと、好ましくない問題の解決はできない。

 

二つの方法

現状の問題から課題を導き出すのは難しい。

課題が導き出せ、課題を実現する解決策を選定し実行すれば、問題やお困りごとは、ほぼ解決する。

その意味で、的確な課題を見つける方法を知ることは、重要なことである。

課題の導き出し方には、二つの方法がある。

一つ目の方法は、現状と目標とのギャップを意識することから、やるべきこと(課題)を考えるやり方。

二つ目の方法は、現状の問題点やお困りごとの裏にある原因(要因)を探り、課題を見つけるやり方。

 

ケース研修で教える方法

今、ITコーディネータ(ITC)資格取得のためのケース研修を実施している。

この研修の目的は、モデル企業の事例を題材にしてIT経営推進のプロセスを習得することである。

このIT経営推進のプロセスでは、課題の導き出しを以下のようなプロセスで行うとしている。

前述の一つ目の方法である。

  1. 経営目標を設定する
  2. 内部と外部の経営環境を分析する
  3. 経営目標と現状の経営環境とのギャップを意識しながら、クロスSWOT分析で経営課題を抽出する

 

TOC思考プロセスの活用

二つ目の方法には、

TOC(制約理論)の「思考プロセス現状問題構造ツリー」というフレームワークを使うやり方がある。

いろいろな問題間の因果関係(原因と結果)をロジックツリーで表すことによって、

多くの問題を発生させている根本原因をあぶり出し、その中から中核問題を特定するというものである。

この中核問題の存在を放置しておくと同じ問題が繰り返し発生する危険が大きいということから、

根本原因や中核問題に対してやるべきことを課題として設定する。

 

(JMA Management Center Incの資料を改編)

短絡的思考は避けたい

中小企業事業者を支援する実践の現場では、

目標とあるべき姿を設定し、これを実現するために何をすれば良いかを教えて欲しいというよりは、

いろいろ困っている問題が先に提起され、解決して欲しいという場合が多い。

これまで書いてきた二つの課題の導き方は、

事業者の状況に応じて適切な方法で使うことが必要ではあるが、

問題に対する対処療法(短絡的な思考)にならないよう心掛けたいと思っている。