変わる、変えることは難しい

ここ2カ月の間に、ものづくりで凄く尖がった中小企業の社長の話しを聞く機会を得た。

共通しているのは、IT、IOT、AIを活用し、会社を大きく変革したことである。

そして、もう一つ、これらの企業名がすべて英文字であること。

企業名は、「IBUKI」「HILTOP」「iSTC」。

 

IBUKI

先週、金沢での「ICT・IoTビジネスソリューションフェア2019」で金型業界の風雲児といわれる(株)IBUKIの松本社長の記念講演を聞いた。

6年間赤字続きで破綻寸前だった金型メーカー安田製作所を買収し、(株)IBUKIへと社名を変更。大胆な組織改革により1年足らずで黒字へと転じ、経常利益率10%の企業にした。

長年蓄積してきた金型の優れた技術である匠の技を形式知化し、

AIのブレインモデルを作り上げ、技術伝承を行っている。

 

世阿弥の世界

記念講演で非常に参考になったのはIT、IOT、AIの話しではなく、松本社長の経営の考え方である。

能を学んでいる松本社長の話しの中に、世阿弥の世界が出てくる。

変化、花、型。詳しく紹介できないが、能の学びから得られた造詣の深い話しである。

ダーウイーンの進化論を引き合いに出し、

社員「変わらなければダメですか?」。社長答えて曰く「あなたが働いている会社、生き残りたくないですか」。

IoTやAIの導入で効果を出すためには、社員の意識の変化が前提になると。

何回も出てくる「変化」というキーワードが私の耳に残る。

 

変えることは難しい

世阿弥の残した言葉は数多く知られているが、その中に「住する所なきを、まず花と知るべし」という言葉がある。

同じ場所で留まるのではなく、常に変化し続けることが芸の本質であるとの意味である。

芸を人や企業にに置き換えてみるとどうだろう。

人は年齢を重ね、企業は年輪を刻んでくると、過去の成功体験が蓄積され、なかなか新しいことに挑戦したり、過去のやり方を抜本的に変えることが難しくなる。世阿弥はそれを厳しく諫めている。

IBUKI」だけでなく、「HILTOP」、「iSTC」も製造業にとどまらず、製造業からサービス業へと変わろうとしている。

 

人は、なかなか、変われない。

私は経営者として自分を変え、社員の意識を変え、会社を変えることが出来なかった。

社員の意識を変え、会社を変えていったこれらの経営者は凄いと思うし、尊敬する。