4年前の感動をもう一度……

 ラグビーワールドカップ日本大会が近づいてきた。4年前の日本代表と南アフリカ戦。勝つかも知れないと思わせる予想外の戦いにテレビの前に釘付けになった日。勝利が現実のものとなったそのとき、感動のあまり涙したことを思い出す。

 6月に池井戸潤氏の『ノーサイドゲーム』が発売され、テレビドラマ化もされた。今週、小説を読みテレビドラマも観たが、どちらからもラグビーに対する熱い思いが伝わってくる。9月20日に向けて、ラグビーファンが増え、大会が盛り上がってくれれば嬉しい。

 

フルタイムとノーサイド

 ラグビーのルールは奥深く、難しい。しかしルールを理解するとラグビーも見てて面白くなる。ルールの中では、オフサイドの意味がわかりづらい。オフサイドがあれば、オンサイドがある。オンサイドとは選手がプレーして反則にならない区域。逆に選手がプレーすると反則になる区域をオフサイドという。

 そしてノーサイドとは、試合が終われば自陣と敵陣のサイドはなくなり、勝った側も負けた側もない(NO)という意味で、試合終了のことをいう。ちなみに日本はノーサイドが使われるが、世界的には試合終了はフルタイムが一般的なようだ。小説『ノーサイドゲーム』では、ノーサイドとフルタイムは、フルタイムの後にノーサイドなると使い分けされている。ノーサイドは単なる試合終了を超えて、戦いを終えたら両軍は同じスポーツに励み、時間を共有した仲間になると。

 

反則をポケットにしまって

 『ラグビーをひもとく』(集英社)の中で、レフリーで著者の李淳馬日氏が書いていることであるが、もう少しラグビー独特のルールに触れたい。なぜ、反則があってもレフリーが笛を吹かずに「流す」のか? ラグビーのルールは、安全に楽しくゲームを継続するために存在するという考えが根底にあるからだと。例えばプレーヤーがノックオン(ボールを前にこぼす)するとプレーは中断され、通常はセットプレーの一つであるスクラムで試合を再開する。

 しかし、ノックオンしたボールが相手に渡ったらアドバンテージとしてプレーは継続される。また反則によって相手の利益を奪ったと判断されれば、罪の重いペナルティを与える。レフリーは反則によって一方が利益を得たかどうかを判断している。そのため反則でも、レフリーは「反則をポケットにしまって」そのままプレーを続行する。

 

ブレークダウンの反則 

 ラグビーはボールの争奪戦である。その意味で、タックル成立後のボールの争奪戦(ブレークダウン)に関係するルールもわかると、さらにラグビーが面白くなる。レフリーがブレークダウンで反則の笛を吹くのは、以下の場面である。

  • ノットロールアウェイ(タックルをした選手が倒れたままその場から離れずに、相手のプレー(球出し)を邪魔する反則)
  • ノットリリースザボール(タックルをされた選手が倒れてしまったにもかかわらず、ボールを離さずに持ち続ける反則)
  • オーバーザトップ(ボールの前方に倒れ込んで相手側にボールが出るのを妨げる反則
  • オフザゲート(タックルの成立後に形成されるタックルボックスに対して、自分たちのゴールライン側以外から参加した、という反則)
  • ホールディング(タックルしたプレーヤーは一度相手を離さないと反則)
  • ハンド(地面にボールがあるラックで手を使って、ボールを取れば反則)。

 

ラグビー憲章

 ワールドラグビーのラグビー憲章にはラガーマンに下記のような5つのことを求めている。ラグビーはボールを奪い合う激しい格闘技ではあるが、紳士的スポーツと見なされるのは、これ故であろう。そして私がラグビーを愛するのも、これが理由でもある。

  • 品位 (INTEGRITY)
    • 品位とはゲームの構造の核を成すものであり、誠実さとフェアプレーによって生み出される。
  • 情熱 (PASSION)
    • ラグビーに関わる人々は、ゲームに対する情熱的な熱意を持っている。ラグビーは、興奮を呼び、愛着を誘い、グローバルなラグビーファミリーへの帰属意識を生む。
  • 結束 (SOLIDARITY)
    • ラグビーは、生涯続く友情、絆、チームワーク、そして、文化的、地理的、政治的、宗教的な相違を超えた忠誠心へとつながる一体的な精神をもたらす。
  • 規律 (DISCIPLINE)
    • 規律とはフィールドの内外においてゲームに不可欠なものであり、競技規則、競技に関する規定、そして、ラグビーのコアバリューを順守することによって表現される。
  • 尊重 (RESPECT)
    • チームメイト、相手、マッチオフィシャル、そして、ゲームに参加する人を尊重することは、最も重要である。

 

9月20日から始まるワールドカップラグビー。4年前の感動をもう一度……。熱くなりたい!