中小後継未定127万社
一昨年(2017年)10月6日の日経に衝撃的な見出しが掲載されました。「大廃業時代の足音 中小後継未定127万社。優良技術断絶も」。日本の中小企業は約360万社。その1/3に後継者が見つかっていない。そのまま廃業すれば、実に650万人の雇用と22兆円のGDPが失われることになるそうです。事業承継問題は切迫した問題になっているのです。
事業承継の形
事業承継は、社長の親族を後継者として引き継ぐパターン、信頼の置ける従業員をトップに据えたり、外部から後継者を引っ張ってくるケース、会社をM&Aにより事業承継するケースなどがあります。オーナー社長が圧倒的に多い日本では、いまだに主流は親族による事業承継です。会社の経営を後継者(親族)に引き継ぐ形の事業承継は大きな課題でありますが、それ以上に大きな課題は、引き継いだ後も事業を成長させなければならないことです。後継者は大変です。
二人の後継者
二人の後継者について。一人目です。私の高校の同級生が経営している会社、株式会社前田工繊。彼は、1918年に創業した機屋を自分の代で東証1部上場企業までに成長させました。昨年、長男に事業承継(社長交代)しています。株主からは何かと企業利益の増大を求められる後継者。二人目は株式会社玉子屋の二代目社長。この玉子屋、TV「カンブリア宮殿」などで取り上げられた日替わり弁当を1日7万食を配達し、年商70億円の凄い中小企業です。先代は、早くから長男を後継者として決め、長男が27歳で玉子屋に入社したときには全権を委任される形で後継者になっています。スムーズに事業を承継した二人、後継者になったときは肩に圧し掛かる大きなモノを感じたと想像できます。
弁当屋の経営
この玉子屋の後継者(菅原勇一朗氏)が書いた本が最近出版されました。『東京大田区・弁当屋のすごい経営』です。この本のおわりに、事業に失敗するこつ十二箇条というのが書かれています。額に入って、玉子屋の応接コーナーの壁にかかっているそうです。
第1条 旧来の方法が一番良いと信じていること。
第2条 もちはもち屋だとうぬぼれていること。
第3条 ひまがないといって本を読まぬこと。
第4条 どうにかなると考えていること。
第5条 稼ぐに追いつく貧乏なしと考えている
第6条 良いものはだまっていても売れると安心していること。
第7条 高い給料は出せないといって人を安く使うこと。
第8条 支払いは延ばす方が得だとなるべく支払わぬ工夫をすること。
第9条 機械は高いといって人を使うこと。
第10条 お客は我がまま過ぎると考えること。
第11条 商売人は人情は禁物だと考えること。
第12条 そんなことは出来ないと改善せぬこと。
社長の菅原さんは、「会社の調子がいいとき、調子が上がらないとき、決断を迫られるとき、迷っているとき、気持ちが緩んでいるとき、歯を食いしばっているとき・・・。そのときどきで自分の心にしっとりと入ってきて、戒めてくれる言葉がある」と。事業を潰すのは簡単。しかし事業を継続成長させるのは、大きな努力を要する。私の会社は、4年前に某企業にM&Aで事業承継しました。事業に失敗せずに乗り切った15年。私にもいくつかの条項が教訓として響きます。日本の中小企業の経営者、この12条をアンチテーゼとして頑張って欲しいものです。
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