言葉の共通理解が必要!

長寿セミナー

栃川ITCとのコンビで実施している(公財)ふくい産業支援センターの4日間研修「営業・SEのための提案スキル」。今年で10年目となる長寿セミナーです。顧客の真のニーズを探り、自分なりの仮説を設定(あたりを付ける)し、質問によって仮説を検証しながら付加価値の高い提案が出来るようになる。これがこの研修のKPIです。課題の解決策に付加価値をつけるためには、その前提となる顧客の問題を洗い出し、問題の原因を探り、課題を設定することが必要になります。課題の設定は難しく、思考能力が問われます。

TOC思考プロセス

(出典:『思考を変える!見方が変わる会社が変わる』石田忠弘他著 著書に掲載の図を編集)

TOC(制約理論)という考え方があります。TOCとは、生産管理手法の理論の一種で、工程の中でボトルネックになっている部分を見つけ出し、制約条件としてボトルネックを継続的に改善し、システムのパフォーマンス向上を実現するための理論です。イスラエルの物理学者・エリヤフ・ゴールドラットによって提唱され、彼の著書『The Goal』は2001年に『ザ・ゴール』として日本語に翻訳されて出版されました。約68万部のベストセラーにもなりました。当時、私もこの理論の凄さ、実践事例の効果の大きさに驚き、研修も受け勉強もしました。このTOCの中にTOC思考プロセスという問題解決ツールが入っています。「どこを改善すれば全体がよくなるか」という視点から組織全体を変革するツールです。このTOC思考プロセスでは、根本原因に手を打たなければ問題は解消しないとしています。日常直面する問題は、何らかの結果であり、結果には原因があります。その原因も、別の原因の結果です。この問題の因果関係をたどっていけば、根本原因が見つかるはずです。結果に対して、どんな対策をとっても症状が軽減される応急処置でしかありません。根本原因に対して対策を施さなけらば、問題はいつまでたっても解消されないのです。

『共通フレーム2013』

コンピュータ・システムの開発において、システム発注側(ユーザー)と受注側(ベンダ)の間で相互の役割や業務の範囲・内容、契約上の責任などに対する誤解がないように、双方に共通して利用できるよう用語や作業内容の標準化をするために作られたガイドラインがIPAから出版されています。『共通フレーム2013』です。ユーザー企業が「こんなシステムにしたい」というのが要求。それを分析し、最終的に新システムに反映させるものに練り上げたのが要件。分析によって、要求を練り上げ、要件として確定したものを要件定義としています。 

 

言葉と内容の共通理解

ITコーディネータが企業支援するときの基本的な考え方をまとめたものとして、ITCプロセスガイドライン(ITC-PGL)があります。目標と現状とのギャップを見据えた課題解決プロセスです。問題改善型のプロセスではありません。まず目標を確認し、次に現状を分析して問題点とその原因を特定する。目標と現状とのギャップを認識し、課題の設定と解決策でギャップを解消する。この解決策には、内部と外部のIT環境を考慮しながらIT利活用の可能性を検討し、解決策の実行項目とする。これらのプロセスの中で、「問題」、「原因」、「課題」の意味するところを、支援者(ITコーディネータ)とユーザ企業との間で言葉の共通理解をすることは非常に重要です。今後も、言葉と言葉が意味する内容の共通理解にこだわっていきたいと考えています。