ITCになろう・・・
「今の自分を次のステージへ」。これは、ITコーディネータ協会ホームページ内ケース研修ページのキャッチコピーです。ITコーディネータ資格(以下、ITC資格)は、経済産業省推進資格ですが、最近は、スキル標準ユーザー協会「ITSSレベル4」認定資格ですと一つ冠が増えました。そしてITCは、IT経営を実現するプロフェッショナルとも言われます。正確に言えば、IT経営を実現し、実践するのは中小企業の経営者又はIT経営推進者であり、支援する専門家がITCです。このIT経営実現、推進のために「IT経営推進プロセスガイドライン(通称、PGL)」があります。ケース研修と呼ばれている研修は、ITCになろうとする人が受講するITコーディネータ資格認定に必要となる研修プログラムです。内容は、モデル企業の事例を題材に「グループ討議」「ロールプレイ」を通じてPGLの知識体系を習得し、IT経営を模擬体験するものです。
IT経営への変革認識とは
このケース研修のプログラムの冒頭で「IT経営変革認識」を学びます。IT経営への変革認識とは、経営環境やIT環境の大きな変化の中で、経営者や従業員が新たな変化に気づき、危機感や問題意識を共有し、経営者が変革の方向性を明示、是正していく取り組みを継続的に行なうことです。これによって経営変革を推進しやすい企業風土に変え、持続的な成長を成し遂げることが可能になります。ケース研修では、このIT経営への変革認識を下記の4つの手順(プロセス)に分け、学びます。
(手順1) 気づき情報の収集
- 収集した全従業員の「気づき情報」を改善・改革につながる「気づき情報リスト」として集約し、経営者を含めた全従業員で共有します。
- 経営者は、気づき情報等によって作られるモヤモヤとしたカタマリから問題意識や危機意識が表面化するが、それは暗黙知のままです。ヒアリング(傾聴)を重ねることにより、暗黙知の経営者の問題意識や危機意識は「気づき情報リスト」として形式知化します。
(手順2) 変革に向けての課題の抽出
- 集約した「気づき情報リスト」をベースに、解決すべき「課題」をできる限り多く抽出し、「課題リスト」を作成します。ブレインストーミング等を活用し、経営者の思いや集約した「気づき情報リスト」から、できるだけ多くの課題を抽出します。
- 抽出した課題を、改善・改革の検討のために、バリューチェーンモデルやファイブフォース分析などの切り口をカテゴリーとして分類し、「課題リスト」を作成します。
(手順3) 本質的な課題の理解
- 抽出した「課題」の中から本質的な課題は何かを理解するために、課題の関係を表した「課題体系図」を作成します。
- 抽出した「課題」の中から本質的な課題は何かを理解するために、「Why-Why-Why」と根本原因を追及します。親和図法」的な手法を利用し、解決する道筋を理解できる「課題体系図」として表記します。
(手順4) 解決策の検討と策定
- 気づき情報リストなどの事実情報をベースに手段や施策を検討し、その上で「課題」に対する「課題解決(対応)策」を策定します。
- 課題の対応方法や効果を整理し「課題対応策リスト」としてまとめ、ます。「課題対応策リスト」には、今後検討する主担当、実現時期、概算費用、投資効果などを含めます。
(手順5) 経営者の判断
- 目指すべき目標、IT経営推進レベルを決定し、「課題解決策」の中から具体化する「課題解決策候補」を決定し、あわせて「目指すべき経営ビジョン」を決定します。
- 経営者が思い描く「目指すべき目標」、IT経営推進(IT経営の成熟度)のレベルのうち「IT経営マインド」および「IT経営ガバナンス」を決定し、これらに基づき、「課題対応策リスト」の中から検討を具体化するための「課題解決策候補」についての意思決定を行います。
- 経営者は、この決定を行うことにより、内部の力や外部の変化を考慮し、目指すべき経営ビジョン(自社のあるべき姿)を決定します。
(手順6) 変革構想書の作成と変革の表明
- 目標を達成すべく、経営戦略の方針として「変革構想書」をまとめ、最終的な意思決定を経営者が行ないます。
現実の支援現場では
今私がIoT導入案件で支援している手順も、ほぼ上記の手順と同じです。
(手順1)現状認識
- 経営環境の変化や競合社など、経営の状況を認識する
- 経営者が考える、経営において困っていることを確認する
- 現場の社員が考えている問題とお困りごと、その原因をブレーンストーミングで洗い出す
- 現状の業務フロー(As-Is)を共有する
(手順2)経営課題の抽出
- 経営者が目指す状態を確認する
- 課題を設定する
(手順3)と(手順4)課題解決の取組方法
- ありたい業務フロー(To-Be)を描く
- IoTの活用方法案を検討する
これらの手順(プロセス)において最も重要な支援者としてのスキルは、支援する企業の社員や経営者に対する質問力と傾聴力そして対話力です。
WASEDA NEOの講師から学ぶ
質問力と傾聴力を鍛え顧客との有意義な対話を実現。真のニーズを引き出し、ビジネスを成功に導く。
メディアの多様化により人々のコミュニケーションの形が日々変化する中、「確かな対話力」の重要性が再び注目を集めています。そのような中、消費者調査(カスタマースタディ)の分野で確立された手法は、顧客のニーズや期待を理解する上で有効とされ、これまで多くの企業が、新規事業の立案や既存の事業の拡大・発展に活用してきました。本「朝活」では、調査で使用されるテクニックとその背景理論を開示します。これを踏まえ、正しいアンケートとインタビューの設計・実施方法を身に着けます。その体験・実践を通して、あなたの質問力と傾聴力を一緒に高めていきましょう。
これは、WASEDA NEOで朝活の講師をしている光成章さんの講座概要です。光成さんは2018年6月、主にリサーチ(市場調査)を行うジャートム株式会社設立しました。高校の後輩でもあり、親しくしている方です。ITコーディネータの福井のコミュニティであるNPO法人福井県情報化支援協会の10月例会(勉強会)で講師としてお話しをしてもらう予定です。「質問力と傾聴力を鍛え顧客との有意義な対話を実現する」は、ITCにとってあるべき姿でもあります。光成さんのお話しを聞けることにワクワクしています。
<注>WASEDA NEO
2017年7月、早稲田大学がコレド日本橋5階にWASEDA NEOをオープン。ビジネスパーソンのスキル獲得、業種を越えたコミュニティの形成、実課題に沿ったトレーニングプログラムの提供を行っています。
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