好きにするおじさんたち・・・

時間的な余裕ができた

中小企業白書(2017年度版)の起業・創業実態調査をみると、起業した人の年齢では60歳以上のシニアが最も多く、全体の35%を占めています。この調査では、男女・年代別に見た、起業希望者・起業準備者が起業に関心を持ったきっかけを調べていますが、60歳以上の年代は、「時間的な余裕ができた」が最も高くなっており、次いで「働き口(収入)を得る必要があった」の順になっています。34歳以下や35~59歳では最も割合が高かった「周囲の起業家・経営者の影響」は、60歳以上においてはかなり割合が低下しています。この結果を受け中小企業白書は、60歳以上の男性は周囲の起業家や経営者の影響を受けてではなく、定年退職等を機に、収入を得るために次の働き方として起業を選択していると推察されるとしています。

ゆっくりしたい

『もっと知りたい定年の楽しみ方』(遠山紘司著)に挿入されているコラム「ゆっくりしたい!」には、目覚まし時計で起こされることなく、好きな時間に起きる。落ち着いて味わいながら朝食を食べ、一面から教養面、科学面さらには家庭面まで、隅々にいたるまでゆっくり新聞を読む。その後は朝のワイド番組、BS放送、時代劇など、何時間でも好きなテレビを見る。サラリーマン時代には考えられなかった、定年を迎えた朝のゆっくりした時間の過ごし方が書かれています。これぞサンデー毎日であると。別のコラム「教養があってよかった」では、定年退職者にとっての教養とは教は今日であり、養は用である。「教養があってよかった」とは、まさに今日行くところがあってよかった、という意味であると。コラムの最後に、著者の友人で書道教室を主宰しているNさんの言葉を紹介しています。「自分は定年しても書道で忙しいが、何もない人は1日をどう過ごすかに気を使われているようです。それぞれに苦労があるようですね」。

 

人それぞれ好きにすれば

多くの定年本は、定年後は「生き生きと楽しくしよう」と書いている中で、「何をしてもいい自由、何もしない自由」でいいではないかと、一味ちがう定年後の自分の生き方を書いているのが勢古浩爾さん。著書は『定年後7年目のリアル』、『さらなる定年後のリアル』、『定年バカ』、『古希のリアル』。独特の勢古節に共感を覚える方も多いと思います。『定年バカ』から勢古節の一部を引用するとこんな感じです。「・・・無為の人間を下に見ている連中が、どんな有意義なことをしているのかというと、週に3日のパート、社交ダンス、ゴルフ、カラオケに、友人たちとの談笑ぐらいである。その他、なんでもいい。水泳やヨガや英会話や万葉集研究。大したことないじゃないか。他人にしてみれば、人がなにに熱中していようと、ほとんどのものが大したことないのである。いや私は自営で仕事しているよ、ボランティアしているよ、自治会活動をしているよ、という人がいるだろう。けっこうなことである。それがその人の好きなことだからである。そして、好きなことをしているという点では、なにをしていても、なにをしていなくても、おなじである。わたしは、なにもするな、なにもしないことが一番だ、といっているのではない。人それぞれ、好きにすればいい、それしかない、ということである。同年配の人に”なにをしているんですか?”と訊かれる。”なにもしていない”と答える。すると”もったいないなあ”とくる。・・・(中略)”もったいないなあ”といいたがる連中は、自分は有意義なことをしているといいたいのだろうか。そんなもの、どっちにせよ大したことないのである。・・・”なにもしていない”人間が、まるで罪人のように、一方的に責められるいわれはない」。

 

教養があってよかった

私はこれからも、日々健康で「教養があってよかった」を続けていきたいと考えています。勢古流に言えば、行くところは卑賤優越はなく、人とそれぞれに「今日用があり」、「好きに生きている」のだと。しかし、「教養があってよかった」で満足せず、もっと「生き生きと楽しくしよう」と思うことがあります。最後に、このような生き方を実現するために参考になる定年本を紹介しておきます。

・『定年後』、『定年準備』(楠木 新著)

・『定年後不安』(大杉 潤著)

・『定年前後のやってはいけない』(郡山 史郎著)

・『もっと知りたい定年の楽しみ方』(遠山 紘司著)

・『会社人生、五十路の壁』(江上 剛著)

・『会社は「一人」で経営しなさい』(山本 憲明著)

・『定年入門』(高橋 秀美著)