夫源病にならないために・・・

働く老後へ

「定年退職後、無職になった夫が常に家にいることが原因で、妻がストレス症状を訴えるようになるのを主人在宅ストレス症候群もしくは夫源病というそうだ」。郡山さんの著書『定年前後の「やってはいけない」』の中に書かれています。郡山さんは93歳。ソニーの元常務で現在もなお現役社長として働いている方です。前回に続き、いくつかの定年本に書かれている内容を紹介しながら、定年後をどう生きるかについて私の思うところを述べることにします。

 

8万時間をどう生きるか

今回と次回は、定年後は起業して社会にかかわり、生き生きとした生活をしよう派の楠木 新が書いた『定年後』、『定年準備』と大杉 潤著)さんが書いた『定年後不安』を取り上げ、内容を紹介します。

  • 人生は後半戦が勝負。
  • 定年後は、自由にできる時間が8万時間もある。
  • 60歳から75歳までの15年間を「黄金の15年」にするため、定年前に準備をしておこう。

これらは昨年4月出版された『定年後』の中で著者が言っていることです。定年(60歳)後から75歳まで、そして75歳から平均寿命の84歳まで、日々の睡眠や食事、入浴などの必要な生活時間を除いて計算すると、自由にできる時間は=11時間×365日×15年+5.5時間×365日×10年となります。計8万時間です。この間、ゴルフや釣り、趣味に生きますか。それとも社会とつながって生き生きとした生活をしますかと、著者は問いかけています。

 

ホワイトホールスタディ

ふくい産業支援センターの創業マネージャーの仕事の一つとして、毎年2回、県立図書館で「シニア起業のすすめ」セミナーを開催しています。その中で、楠木 新さんの言葉を引用しながら、シニア起業を勧めています。人生は後半戦が勝負。長く社会とつながって生きる選択肢は起業であり、社会健康学、ホールスタディー(注1)を信じ、自分で決められる裁量権を持ち長生きしよう。一人経営者(注2)として小さく長く続ける起業はシニア向きですと。そしてセミナーの最後は、この言葉で締めます。「浜までは海女も蓑着る時雨かな」(注3)。

 

<注1>ホワイトホールスタディ

英ロンドン大学がストレスと死亡率の関係解明の目的で1967年~1980年まで継続して行った疫学の研究成果のことです。被験者はロンドンの官庁街で働く約28,000人の公務員。

  • トップは長生き!偉い人たちほど死亡率が低かった。
  • 「自分で自由に決めることができる権利」を持っている人ほど死亡率が低い。

 ストレスの多いはずのトップの寿命が長いのも、「自分でさまざまなことを決めることができる選択の自由があるからだ」と研究は結論づけています。

<注2>出典:『50歳からの起業術』(中野裕哲著)

<注3>江戸時代の俳人滝瓢水作 出典:『思考の整理学』(外山滋比古著)