もう一人の自分を作る

企業内ITC懇談会 in 金沢

企業内ITコーディネータ(以下ITC)にとってITC資格を活かす活動をするためには。昨日金沢で、こんなテーマで企業内ITCによる懇談会、グループ討議があり、オブザーバーとして参加しました。本業とITC活動の両立は難しい。ITC活動が会社の利益につながらないと評価されないから、活動しにくい。この二つに代表される意見は参加した多くの企業内ITCの声です。一方、将来の独立・起業を考えるとき、企業にいる間に中小企業経営者と対話する、支援する経験を積みたい、との思いを持っている方は多いようです。

 

企業内ITCの課題

オブザーバーとして、グループ討議後の発表に対して、以下のようなコメントをしました。企業内ITCとして資格を活かす一つとして、国の中小企業支援事業、例えば「ものづくり補助金」事業の申請を支援してはどうだろうか。2年前からこの事業の対象はものづくりのための設備投資の他に革新的サービス創造のためのIT投資も対象になっています。今年は、定型業務の効率化、生産性向上のための「RPA(Robotic Process Automation)」を導入して生産性向上を図る申請も出てきています。これなどは企業内ITCが得意とするものであり、顧客のためにPGLを活用して生産性向上のためのシナリオを描き、申請書作成を支援するという、将にITCらしい活動です。結果、補助金に採択されれば、顧客の追加または新規システム投資の受注に結び付けば、本業に貢献できた活動だったと言えます。

 

シニア起業のススメ

公益財団法人ふくい産業支援センターの創業マネージャーになって3年目になります。この間、年に2回ほど「シニア起業のススメ」というセミナーを担当者が企画し、私が講師としてお話しをしています。セミナーには毎回定員を超える方が受講され、シニアの方、これからシニア世代を迎えるかたの起業への関心の高さがうかがえます。このセミナーで毎回言っていることがあります。

  • 自分の得意技を活かす
  • 社会の要請や他人のニーズをつかむ
  • 40台後半ぐらいから定年後に備えた助走期間と考え、市場調査したり、商売のやり方を考えておく。現役のときに、可能であれば、副業や社内起業を経験してみる

 

じゃんけんの場

楠木新さんは著書『定年準備』の中で、本業をやりながらもう一人の自分を作り、このもう一人の自分が独立・起業できるように準備しなさいと書いています。組織の中に長くいると、社会的ニーズに対する感度が弱くなる。次のステップとして独立・起業を検討するとき、「もっとスキルを身につけてから」という背景には、「成功の割合30%、失敗の割合70%」といった枠組みを頭の中で作り、もっと成功の確率を高めてから新しい世界に踏み出そうとしている人が多い。そうではなく、独立・起業した新しい世界は、当初は勝つ見込みの少ないじゃんけんを何度も続けるようなもので、「負け、負け、おあいこ、負け、おあいこ、負け、負け、勝ち、負け」といった具合だと。

 

昨日の企業内ITCのグループ討議でもう一つの課題として挙がった「企業にいる間に中小企業経営者と対話する、支援する経験を積む」は将に、中小企業経営者と当初は負けの続くじゃんけんに勝つための準備をすることです。じゃんけんをしながら、次第に経営者が求めるものをつかみ取り、勝ちにつながる支援が出来るようになっていく。では、じゃんけんをする場はどこにあるのだろうか。私が理事長を務めるNPO法人石川県情報化支援協会では、金融機関と連携しながら、またITコーディネータ協会とも連携しながら、じゃんけんの場を創っていこうと思っています。企業内ITCがITC資格をとって良かったと思えるためにも、じゃんけんの場を活用しながら「もう一人の自分」が独立・起業する準備は必要です。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    岸本圭史 (土曜日, 09 6月 2018 13:52)

    企業内ITCの方が「ローカルベンチマークツール」みたいなものを利用しながら事業経営者の方と対話する・ヒアリングするという場を作っていけたら、企業内ITCの方の独立へ向けた意識づくり・環境づくりに役に立つんじゃないでしょうか?