何歳になってもリカレント(学び直し)

人生100年時代

人生100年時代。この言葉は、安倍政権の目玉政策「人づくり革命」のキーワードになっています。設置された「人生100年時代構想会議」で議論されているのが、社会人の「リカレント(学び直し)教育」です。『ライフシフト 100年時代の人生戦略』の著者 英国ロンドン・ビジネススクールの教授 グラントンさんも同会議のメンバーに入っています。時代の流れに沿って、自分の才能を活かせる人生戦略を考え、生き方働き方を変えていく。ライフシフトとは、こんな考えかたを指すのでしょうか。そして100歳まで元気に幸せに生きる人生戦略を作るライフシフトには、「リカレント(学び直し)教育」が必要になってくると。

<添付イラストの出典:2月24日号『週間東洋経済』の特集「ライフシフト学び直し編」>

ライフシフトとは

ライフシフトの著者とコピーライター糸井重里氏との対談から著者の言葉を引用させてもらい、ライフシフトについてもう少し具体的にイメージしてみたいと思います。

「今回の『ライフ・シフト』という本は、これからの寿命100年時代にどんな変化が起こり、どんな人生戦略をとるべきかを書いたものなんです。たとえば100歳まで生きる場合、65歳に引退して、それまでに蓄えた資産で残りの人生を暮らすのは現実的じゃないんですね。また人生が長くなると、健康や人間関係についても考えなければなりません。ですから1945年生まれ、1971年生まれ、1998年生まれの人物を想定し、それぞれこんな可能性がありそうですよねと例を出しながら、読者の皆さんの人生設計のヒントにしてもらえるような内容になっています」。

「大事なキーワードが2つあるんです。ひとつが人生のマルチステージ化。もうひとつが無形資産。まず人生のマルチステージ化は、いままでのような学ぶ時期/会社勤めの時期/引退後という3ステージでの人生を選ぶ人が減り、より多くのステージからなる人生を選ぶ人が増えるということです。◯歳ではこのステージといったことも減り、生きることが多様化する。学ぶ時期、会社勤めの時期、引退後以外の別のステージもでてきます。新しいステージには、こんなものがあると思います。旅をしたり、経験を積んだりして社会の見聞を広めるエクスプローラーのステージ。キャリアを外れ、自分で職を生み出すインディペンデント・プロデューサーのステージ。同時にいくつもの活動に関わるポートフォリオ・ワーカーのステージ。すでにいま、そういった生き方を選ぶ人たちが増えてきているんです」。

「寿命100年時代には、マイホームや現金や銀行預金といった有形資産だけでなく、目に見えない資産の無形資産についてもどう増やし、どう運用していくか、目を向ける必要がでてくるだろうということです。わたしは大まかに次の3つを考えています。まず生産性資産。これは仕事に役立つスキルや知識など。また、仕事につながる人間関係や評判といったこともそうです。次に活力資産。これは健康、友人、愛など。それぞれの人に肉体的・精神的な幸福感と充実感を持たせ、やる気をかきたて、前向きな気持ちにさせてくれる資産です。そして変身資産。人生の途中で、新ステージへの移行を成功させる意思と能力のこと」。

「人生がマルチステージ化する100年時代には、次のステージにうまく移ることが非常に大事になるんです。寿命100年時代、それぞれの人の人生はより複雑になります。背景となる社会も、長い時間のなかで変化しますから。ですから有形資産だけでなく、いまお伝えした無形資産についても考えつつ人生戦略を立てていくことが、さまざまな危機を回避することに役立ち、より充実した人生を送りやすくすると思うんです。そんなふうに、人生設計のヒントにしてもらえたらと、今回の本を出したんですね」。

 

何をリカレント(学び直し)すればよいのか

では何を学び直すべきなのか。2月24日号『週間東洋経済』の特集「ライフシフト学び直し編」に参考になるテンプレートがありました。何を学び直すべきかがわかる「自分棚卸しシート」です。どこで学ぶことができるのか。特に現役のビジネスマンがオンラインで学べる講座について参考になる情報が同誌に掲載されていましたので、これらを引用し、紹介します。

人生100年時代のシニア起業に必要なもの

先日、ふくい産業支援センターでの創業相談にこんな方が来られました。この方は現在64歳。名古屋市で不動産業を経営されています。故郷の福井県勝山市にシェアハウスを建て、ここで引きこもりになって就労できない人たちに宿泊してもらい、精神的な悩みで引きこもりになったシェアハウス利用者に対し、浄土真宗の朝晩のお勤めをとおして社会復帰、就労復帰を目指すNPO法人起業を考えています。将来的には、これまでの不動産事業は後継者に事業承継し、自分はあらたに起業する事業でこれからの第3のステージを輝やかせようとしています。この事業に必要な浄土真宗の教えを習得するため、僧侶としての資格も取得したようです。これまで多くのシニア方の創業相談に対応してきました。これまでの経験を活かし、小さく起業し、ゆっくりと長く輝ける20年(定年後~80歳)を作っていきましょう。こんな風にアドバイスしてきました。しかし、人生100年時代を考えるとき、今まさにAIの台頭があり、今後も世の中の環境は大きく変わる可能性があります。長年経験した一つのスキルで一定程度の収入を得るのは難しくなってくるのでしょう。長寿社会のライフシフトを見据えると、何歳になってもリカレント(学び直し)の重要性を実感します。