ケース研修(IT導入からITサービス活用)④

IT導入からITサービス活用のフェーズにおいては、RFPにもとづく資源調達において選定されたITベンダーは、ユーザとの共同プロジェクト体制のもと、いわゆるV字モデル一連の工程を経てITサービスの活用へとプロジェクトを進めていくことになります。

IT導入フェーズの3つの問題ケース

この間、ITCはIT導入からITサービス活用へのプロセスで起こってくるトラブルにどのように対応するべきかが、大きな役割となってきます。ケース研修では3つのケースについて、緊急対策、再発防止のための原因究明と再発防止策を考えます。

(ケース1)要件定義での予算オーバー

要件定義終了間際になったある日、ベンダーから機能仕様が当初より増加したので、開発費用に関して追加費用を要求したい旨の報告を受けた。これは要件定義にてユーザーは自分の使いやすさを優先して要望を提示し、ベンダー側はそのまま受け入れて要件定義書を作成したため見積金額を大幅に超過してしまった。契約締結は済んでおり、インテリアライフとしてはこれ以上の予算投入は厳しい状況である。

(ケース2)ベンダーから突然の『進捗遅れ』の報告

要件定義が終了した後、基本設計は順調に進んでいるとベンダーから報告を受けていたが、詳細設計に入った直後、進捗会議の席上でベンダーから『2週間遅延している』という報告を受けた。原因は新規投入された要員が、要件定義書や基本設計書の内容が理解できないため、Q&Aが通常より多く発生し、その対応に追われていることが原因であった。ベンダー側では実装工程で遅れを取り戻すと言っているが、仕入先A社のシステムとEDI連携をする計画であり、X社へのインターフェース仕様書(詳細設計工程で作成中)を渡す期限が迫っており、2週間の遅延リカバリは困難な状況にある。

(ケース3)総合テスト段階での業務プロセス改革チームからの苦情

総合テストを実施する段階になった。業務プロセス改革チームが総合テストを開始したところ、想定していたシステム機能と違っているという声が上がってきた。原因を調査したところ、「必要な入力項目が存在しない」、「計算結果が想定と異なる」、「画面のレイアウトが見にくい」など、業務要件を満たしていない機能や使いずらいというものなど、主にシステム機能の仕様に関する認識がユーザーとベンダーとで異なっていることが原因であった。このまま総合テストを実施すると、業務部門に新たなIT環境の利用を拒否される懸念もある。

 

モニタリング&コントロール

IT経営推進ガイドライン(ITC-PGL)では、変革認識領域からIT経営実現領域全体にわたるIT経営共通領域としてモニタリング&コントロールという非常に重要なプロセスがあります。結果をモニタリングすることにより、計画値と実測値を対比させ、実現度の評価と差異分析を実施します。そして、差異の原因分析を行って、新たな課題を抽出し、解決方針を明らかにします。

二つの達成度評価

ケース研修では、「IT戦略の達成度評価」「経営戦略の達成度評価」を行い、IT戦略の実行、すなわちITサービスの活用によって目標とした成果(経営戦略の達成指標)が得られたか。IT戦略目標の達成度指標KGIが経営戦略目標の評価指標KPIとつながっていたかどうかを検証します。

 

これまでのプロセスにおいて企業の変革、組織の成長を確認し、次の変革実現に向けて何が必要かを認識して新たに持続的な成長を目指していきます。

 

(これで「ケース研修で学べること」シリーズは終了します)