トリムタブで小さく動かし大きな変革を!

画期的な補助金

研修費用も補助対象経費となっている福井県の「IoT・AI等導入促進補助金」。この研修費用とは、導入に関わる技術の習得に関わる研修ですが、実はITコーディネータ認定用ケース研修も含まれます。「ITコーディネータ研修などの費用・・・」と県の担当者は説明会で明確に話しをしていました。ユーザ企業の中にITコーディネータを育てようとする県の意思が表れています。画期的な補助金です。経済産業省によって2001年に創設されたITコーディネータは、今、国の施策に必要不可欠な存在になってきました。

 

迫りくる日本の危機

10月6日の日経に衝撃的な見出しが!「大廃業時代の足音 中小後継未定127万社 優良技術断絶も」。事業承継問題は切迫した問題になっています。しかし、こういう状況のなかで国はこのように考えているようです。「もったいない会社」にフォーカスしていきたい。「もったいない会社」が、より生産性を高めて承継されるようにしていくことが大事だと。このような日本を取り巻く危機的な状況は、その他に、深刻な労働力不足、先進国最低の労働生産性があります。政府は今年の3月28日の働き方改革実現会議(議長 安倍総理)で次のような働き方改革の基本的な考え方決定しています。

  • 日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革
  • 働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段
  • 生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」が構築される。

この働き方改革で示された生産性向上は、昨年6月に制定された「中小企業等経営強化法」による生産性向上計画がキーとなります。

 

経営力向上計画

生産性を向上させていくためには、周囲の環境を踏まえつつ、自社の強みを意識したビジネスモデルを構築し続けていくことが重要になります。まず、自社の置かれた環境を把握し、強み・弱みを認識するため、自社の経営状態の見える化を行う。この経営力向上計画により生まれる効果は、自社の強み・環境に立脚したビジネスモデルの創出が可能になるということです。そのための必要なアクションは、

  1. 自社の強み・弱み、競争環境、外部環境変化の把握など、自社の経営状態の見える化をすること
  2. 経験と勘による経営からの脱却(財務・非財務情報の戦略的な蓄積、分析、共有、活用)を図るため、オペレーションの標準化、情報の共有・活用をすること
  3. 強みの組み合わせによる経営力向上計画をITによる営業活動や人材育成の戦略的強化とともに策定すること。

これらの一連のプロセスには、ITを活用し、データ分析による強みの発見とデータ分析による新たな強みづくりが必須になってきます。ITを利活用して企業の変革をおこない成長を継続する「IT経営」という言葉が使われるようになって久しく、最近では、理解も深まってきたように思います。ITコーディネータ協会の澁谷会長はさらにもっとわかりやすく、「ITを経営の力とする」という言葉を使っています。この「ITを経営の力とする」とITコーディネータの役割について、次のようなことを言われています。

 

ITを経営の力とする

①ITを経営の力とするためには「対話」が重要。

日経コンピュータ誌の調査「システム開発の成功率」では、2003年の調査(2003.11. 17号)73.3%の失敗率。2008年の調査(2008.12.1号)68.9%の失敗率。ではなぜ7割もが失敗するのか?失敗の大半は、「こんなもの作ってくれといった覚えはない」・・・といった要件ギャップである。そうなる原因は、経営者の「思い」を、深く掘り下げて、具体的な「かたち」にしていくことができていないこと。経営者の「思い」は最初から具体的なわけではない。例えば、「明るい台所が欲しい」という「思い」に対して。それって、窓が大きくて、陽が降り注ぐような台所をイメージされていますか?あるいは、台所のタイルがキラキラしているような感じですか?それとも、カウンターキッチンで、家族と対話しながら料理ができるような雰囲気ですか?こういう対話を繰り返す中で、設計図に落とせる「かたち」ができていく。対話を繰り返すなかで、ITは経営の力になっていく。ITコーディネータの仕事で一番大事なことは、経営者のよき対話相手になること。経営者は、ときに社外の専門家を上手につかって、対話を繰り返すことも有効。ITコーディネータを上手に使っていらっしゃる会社は、総じて社外の専門家の使い方が上手であると。

 

②小さな一歩を、そしてそれを連続させる

大きな船は急に舵を切って方向転換できない。大きな舵で急に動かすと転覆するかも知れない。そうならずに方向転換するためには、トリムタブを動かすことによって、水の抵抗力をコントロールし、水の流れを利用して大きな舵自体を動かす。結果、大きな船の方向を変えることができるようになる。

<注>トリムタブ

バックミンスター・フラーが提唱したトリムタブとは、小さな部分が、巨大な全体をわずかな力で動かす働きのことを指し、彼の思想で頻繁に使用された概念である。 本来のトリムタブとは、船舶において舵自体につける更に小さな舵のことをいう。

社会の期待に応える存在

まずはトリムタブのように小さな部品で小さな行動を起こし小さな変化と効果を実現します。それを連続させ てITシステムとして会社の業務構造に組み込みます。これによって会社は大きな変革を創出することが出来るようになります。ITコーディネータとして、変革のプロセスをサポートする存在としての価値を示し、中小企業380万社の期待に応える存在になっていきたいと思っています。