重要なのは、顧客との対話の繰り返し

長寿研修

今月17日よりスタートした、財団法人ふくい産業支援センター主催の「営業・SEのための提案スキル」研修。今年で8年目となる人気の長寿セミナーです。栃川ITCと二人で講師をしています。「顧客からシステム提案を求められた際、適切な提案を行うスキルを持つことは、受注獲得の大きな武器になります。本研修では、RFP(提案依頼書)などから、顧客が真に求める要求事項を理解すること、それを受けたシステム提案の作成方法、さらに直接のコミュニケーションの場であるプレゼンテーションまでをケース研修をとおして具体的に理解します」。これが本研修の狙いです。そして研修のKGI(成果目標)は、顧客のニーズの背景にある真のニーズ(Why)を見つけ、課題に当たりをつけて提案する仮説検証型提案(新しい提案スタイル)が出来るようになることです。

 

マーケティングの格言

1968年に出版されたT・レビット博士の著書『マーケティング発想法』の冒頭に書いてある言葉「ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」は、マーケティングの世界では有名な格言のひとつになっています。この言葉の意味するところは、顧客の真のニーズをつかんで商品やサービスを提案しようということです。

顧客が本当に必要だったもの

上図は、1970年代アメリカの産業界で既に広まっていた有名な風刺画(作者不詳)です。顧客が本当に必要だったものとは? ITビジネスにおける多難なシステム開発プロジェクトの姿を風刺した絵として、よく使われています。顧客が期待したとおりのシステムとして完成しなかった原因は、開発側の勝手な思い込みや当事者たちの都合の押し付けだと思っていたものが、そもそも最初に顧客が説明した要件からしてズレていた、というオチがついていて非常に面白く納得感があるものです。

・当初顧客が言葉で伝えた要求事項

「他社に無い高性能なブランコを頼むよ。能力三倍でガガっとこんな感じで。システムはよくわかんないんだよね」

・本当に顧客が必要だったもの

「必要な機能は十分に盛り込んでいるシステムで、最新技術とは言い難いがお値段はお手頃なタイヤを使ったブランコ型遊具で十分。わが社に導入するには最適と内心思っていた」

 

仮説検証が出来るようになるためには

顧客の真のニーズをとらえるためには、顧客の抱えている問題点のヒアリングから始めなければなりません。ヒアリングして集めた顧客の問題の中から真の問題を探る必要があります。真の問題を見つけ出す方法として『マッキンゼー流問題解決ノートの使い方』(大嶋祥誉著)に紹介されているやり方が参考になります。「まず問題の原因(Why)や対策(How)も入り混じった問題点の情報を収集し、その中から問題のありか(Where)をノートに抜き出し、WhyとHow、Whereにグルーピングし、関連性がありそうな情報同士を分析してみます。ノートに分類して書き出すことにより、断片的な情報が整理されます。関連性が見えやすくなって、そもそもどこに問題があるのかが明らかになり、課題が見えてきます」。顧客の真のニーズをとらえ、課題を設定して解決策を見据えた仮説を立てることは、非常に難しいことです。その手法を学ぶ必要もありますが、それ以上に重要なことは、常日頃から顧客や顧客の業界環境にアンテナを張っておき、顧客との対話を繰り返すことだと思います。このセミナーをとおして、このポイントを学んで欲しいと願っているところです。