返報性の心理に囚われないこととは・・・

返報性の心理

人から何かを施されたらお返しをしなければならない、という気持ちになることを返報性の心理といいます。私が体験した返報性の心理が働いた事例です。今日とあるビルに入ろうとしたとき、私がビルに入るまで、ドアの傍にいたヤクルトレディーさんが入り口の扉を開けていてくれました。なんと親切な方。おもわず「ヤクルト1本いただけますか」と。

 

眼鏡の構造

眼鏡は大雑把に言うと、左右の耳にひっかけるテンプルと二つのレンズの入ったフロント部分が丁番で固定されている構造になっています。丁番は弾性ある構造だと、眼鏡を頻繁に掛けたり外したりする場合には、変形が少なくて助かります。しかし、永年の使用により、丁番とテンプルを固定しているネジは緩んできます。そればかりか、弾性構造を持たせているが故に丁番の材質である金属には金属疲労が起こってきます。

 

眼鏡店での出来事

今日、かけている眼鏡のテンプルが緩くなり外れそうになったため、テンプルを留めている丁番のネジを締めてもらおうと、東京丸の内にある某大手書店内の眼鏡店に行ったときの出来事です。私のお願いに対し、ネジは締めていただきましたが、まだテンプルは広がったまま。顔にかけても緩くて何か落ち着かない。そこで店員の方に、広がったテンプルを矯正(狭く)してくれませんかと。店員いわく「丁番もへたってるかも知れないので、工具で矯正しますが、有料になります」「いくらかかります?」「1,800円です」。「結構です」と店を出て、自分でテンプルを手で矯正した。こんなに簡単にできるのに、なぜ有料なんだと思いながら、このような店では眼鏡を買わないよと。人はよくしてくれるお店では、いつかこのお店で買ってあげようと思うのに、返報性の心理をわかっていないなと。しかし、数時間後、眼鏡はテンプルの根元から折れてしまいました。そうか、店員の方は、このことを予想して、矯正は専門家に任せなさいと言ったのか。丁番の折れてテンプルが外れた眼鏡の修理は、1,800円ではすまない。

 

どちらがお客様にとってよいのか

この眼鏡は買ってから6年ほど使っているため、丁番のネジは結構な頻度でゆるくなり、その都度、近くの眼鏡店に入りネジ締めとテンプルの矯正をしてもらっています。眼鏡を買っていないお店でも無料でしてくれます。いつか、このお店でも眼鏡買ってあげたいと思いながら、「ありがとう!」を言って店を出ます。しかし、そろそろ「丁番が折れるかも知れません。気を付けてください」とは言われたことはありません。返報性の心理を期待して、無償の施しをしてくれるお店がお客様にとってよいのか。「有料になりますが、矯正は専門家に任せなさい」と言ってくれるお店がお客様にとってよいのか。返報性の心理の功罪を考え、返報性の心理に囚われないことを学んだ出来事でした。