課題設定は最も難しいステップ

課題設定

先日、加賀市で開催されたIoT実践セミナーを受講。当セミナーで使われたテキストは、「IVI(一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ)によるつながるものづくり 現場に潜む問題をデジタル革命につなげる手法」です。このテキストの中に、このようなことが書かれています。「対象とする問題を正しく定義し、そこでの課題が明らかになった時点で、すでに大方の部分が解決しているということもできます。課題が明らかになれば、その後に想定外の事象が起こらない限り、あとはやるべきことをしっかりと行うだけです。逆に言えば、ここでの課題設定こそが、問題解決における最もクリエティブで価値があり、同時に最も難しいステップであるということもできるでしょう」。

 

IVIのアプローチ

私たちITコーディネータが、中小企業のIT経営を推進・支援するときにも同じく課題抽出というプロセスがあります。しかしIVIの手法はアプローチが大きく異なっています。アプローチが工夫されていて、非常に参考になります。以下、課題設定プロセスのときのIVIの手法をまとめてみました。課題設定の視点は3つあり、まずは情報の流れに着目することです。情報の流れとは、業務の流れ、仕事の流れでもあります。必要な情報が、必要なタイミングで、必要な場所に提供できているかを確認し、そうでない場合は課題として設定する候補となります。具体的なアプローチの方法として、ITの7つのムダにフォーカスし、ムダとりを行います。ITの7つのムダとは、1.必要な情報を探すムダ、2.必要な情報の到着を待つムダ、3.不要な情報を生成するムダ、4.不正確な情報を修正するムダ、5.そもそも情報を蓄積するムダ、6.そもそも情報を伝達するムダ、7.情報の意味や精度を確認するムダです。

ITカイゼンの3つのステップ

前述した情報の流れに着目したアプローチでは、情報の流れに関する7つのムダを取り除いていきます。この7つのムダを顕在化し、モダを取り除くために、業務シナリオを描きながら進めるITカイゼンの3つのステップがあります。ここで言っているITカイゼンとは、ITを文字通りの情報技術としてとらえ、デジタル化した情報も、デジタル化されていないアナログ情報、あるいは暗黙知的な情報もすべて対象としています。担当者と担当者の間、業務と業務との間でのやりとりの中で、しくみとして現状をいかに変えていくか、価値を最大化するためにどのような流れをデザインするかが大きな目標となります。3つのステップとは、1.情報の構造の見える化、2.情報の流れの見える化、3.業務のつながり再検討です。最初のステップは、情報の構造の見える化です。情報の構造とは、例えば製造現場で使う工程表、作業日報、カンバン、設備情報などの帳票の配置やフォーマットです。情報の内容(データ)は毎回変わっても、情報の構造は固定的な場合がほとんどです。次のステップは、情報の流れの見える化。ITカイゼンは、比較的、自分の仕事の周辺とのつながり方がメインとなりますが、工場全体や企業全体の視点で最適化を目指すためには、情報の流れを業務シナリオを設定した一つの場面を越えてつながりを見える化する必要があります。

 

業務のつながり再設定

課題設定の前のステップで作成したAS-ISの業務シナリオをもとに、TO-BEの業務シナリオを作成します。AS-ISと同様、役者のモノと情報への活動の関係(業務シナリオ)から、その後の問題解決において、情報システムの実装に至るプロセスを想定し、より詳細なレベルのシナリオを記述します。そのためには、、まず活動をさらに詳細化して操作のレベルまで記述し、その操作の対象がモノなのか、情報なのかを明確にした上で、どのような処理がそこでおこなわれているかを明らかにします。これによって、これまでは現場でおこなわれていたフイジカルな世界の処理が、サイバー空間上で可能かどうかが検討可能となり、必要に応じて、それをサイバー空間のロジックに置き換えることになります。来週、製造現場の改善の相談を受けている企業さんを訪問します。IVIの手法を参考にして、課題設定を行ってみようと考えています。一番難しいステップですが・・・。