IT利活用の時代がようやくやってきた!

A/Bテスト

脳研究者であり、『脳には妙なクセがある』等の著者である池谷裕二さんが、ある雑誌に面白いことを書いていました。「近年、授業中ひたすらキーボードで講義内容をノートパソコンに打ち込む学生は珍しくない。講義内容をノートへ手書きするのと、ノートパソコンなどに入力するのとでは、どちらの方が学習の効果は高いだろうか。米プリンストン大学のミューラー博士らが、327人の大学生を対象に、両者の成績を比較する実験を行った。対象者を半数ずつ、条件を均等にした慎重な実験である。講義後に内容に関するテストを行ったところ、手書きノートの方が軒並み好成績だった」。その理由は割愛するとして、この実験は統計手法のA/Bテストと言われているもので、A案とB案、どちらが効果があるかを検証するのに使われます。

 

因果関係と相関関係

もう一つ、慶應義塾大学准教授で『原因と結果の経済学』の著者、中室牧子さんが書いている相関関係と因果関係を正しく見分けるコツです。「スマートフォンを使うと子供の学力が低下する。そんな言説を最近耳にしたことはないですか。実はこれは、因果関係が実証できていない主張です。経済学者は、二つの事柄の関係について、それが因果関係なのか、相関関係なのかを厳密に区別します。因果関係とは、二つが原因と結果の関係にあることで、相関関係とは、二つの事柄に似た傾向があるものの、原因と結果ではない関係を意味します」。因果関係にあるということは、原因となるものを取り除けば結果が変わってくることを意味します。もし、スマホを取り上げたら、子供はどうすると思いますか。想像つくでしょうと。これも統計手法のRCT(ランダム化比較試験)と呼ばれ、先ほどのA/Bテストとして実用化されています。

 

エクセルで出来るデータ分析

Excelのグラフ機能を使ってデータをビジュアル化することで、データを情報として見ることができます。二つの視点を組み合わせてクロス集計すると、要因分析ができます。そのままのデータを使うのではなく、グラフ機能を使ったり、クロス集計したりすると、データが活きたデータ、情報になります。戦略的にデータを活用する手法として、データを指標付けして、その指標の数値を管理するKPIマネージメントという手法があります。例えば、小売業・サービス業の売上を管理する場合、売上という数字を因数分解します。売上は客数と客単価、店舗数に分解されます。客数は顧客数とリピート率、顧客数は新規顧客数と既存顧客数、退去顧客数に分解することができます。この分解されたそれぞれを指標(KPI、先行指標)として、毎月の実績データを管理し、先手先手と対策を施し、最終的な売上目標を達成します。

 

情報技術利用促進課の新設

今社会は、ITの普及からITの利活用の時代になってきました。国もITを使ってデータを経営に活かし、生産性向上を目指すことを声高に言っています。先日、経済産業省が47年ぶりの情報関係部門の組織改定を行ったのは、遅すぎた感もありますが、国の本気度の表れでしょう。これまでの組織、情報通信機器課と情報処理振興課を、ハードウェア産業とソフトウェア産業に対する政策を一体的に実施する「情報産業課」と、IT利活用の促進等の利用者向けの政策を適確かつ効率的に進める「情報技術利用促進課」に再編する、としています。データを経営に活用するIT利活用時代が、いよいよ始まります。AIでなくても、A/Bテストや因果関係分析は、Excelでもできる。すぐに使えるツールで始めたものが、勝ち残る。そんな時代になってきました。