商品力と商品価値

西陣織

次女の娘婿が専務として事業をやっている西陣織。久しぶり?(正月に会っているから4か月振り)に京都の孫たちに会いに京都に。昼は孫たちと遊び、夜はお酒を入れながら、彼と仕事談義。これからの西陣織のビジネスモデルの話しです。その中で、彼の会社が、全面的に事業を引き受けることになった能登の能州紬の話しに話題が展開。能州紬の創設者上島洋山さんは、彼の大叔父です。

 

能州紬とは?

上島洋山さんが門前町の夕陽に魅せられ、京都・西陣から移り住んだのが約40年ほど前。この上島洋山さんが輪島市門前町に絲藝苑(しげいえん)を創設し、創り出したのが能州紬です。大島紬や結城紬等と較べると知名度は高くありませんが、普段着としての位置づけだった紬を社交の場で着られるように高めたのは能州紬の功績によるものと言われています。糸は初めに海草で下染めします。次に草木染めによって多くの色を出すことによって能州紬独特の風合いが生まれます。能州紬は一点一点手作りで、絵柄を手織りで表現するため、織り子さんには高い技術と忍耐が求められます。

 

感動と体験

能州紬の織元、絲藝苑の敷地内には「奥能登の小京都」の雰囲気があり、その佇まいは能登の自然が絲藝苑全体を取り込んでいったようにも見えます。そんな能登の自然と京都の風情が行き交う絲藝苑内には作品が常設してあります。先日、彼と彼の父親も参加して能州紬の展示販売会を実施したようです。数百万の商品が売れていく様を話ししてくれました。奥能登の潮の香する絲藝苑、手織りの工房。そんな場所に展示されている能州紬。そこを訪れた人の中に、感動と体験による商品価値が大きくなっていくのを想像できます。

 

商品力と商品価値

上島洋山のことを紹介した『上島洋山の世界』(飛岡健著)が出版されています。本の冒頭グラビアには、日本や世界各地を旅行してイメージした作品が、巻末には能州紬をお召しになったお客様たち、として多くのお客様の着物姿が紹介されています。これらを見ると、能州紬の素晴らしさに圧倒されます。着物業界には、着物利用者の減少、織職人の技術伝承という問題や課題があります。女婿と話しするビジネスモデルの前提には、着物作家のデザイン力と染め、織の技法がもたらす商品力が必要です。この商品力にお客様が価値を見出してもらう動機は何でしょうか。場の感動と体験。奥能登の能州紬は、そのことを教えてくれます。