経営変革のモデルとなる酒蔵

「6」と「九」

「6」と「九」。数ある日本酒の中で、飛びぬけた人気を誇り、現代的な日本酒の双璧ともいえるブランドにつけられた数字です。新政酒造の「No」であり、萬乗酒造の「醸す人平次」です。私の近くにあるお酒販売店にも置いてあって、時折飲む、癖になりそうなほど美味しいお酒です。ともにこれまでの日本酒とは違い、酒臭さがなく甘味と酸味を感じる旨い系のお酒です。新政酒造株式会社(秋田県秋田市)の現在の当主は、8代目佐藤祐輔さん。「No6」は8代目佐藤祐輔さんのこだわりから生まれたお酒です。一方、株式会社萬乗醸造(愛知県名古屋市)の「醸し人九平次」は当代の久野九平治さんが1997年に立ち上げたブランドです。

 

コンセプト(四合瓶)

「こだわりぬいた酒を醸す酒蔵」。新政酒造のコンセプトです。

精米歩合のみが酒の価値を決めるものではないことから、当蔵はいかなる精米歩合であろうとも、すべて「純米酒」という表記に統一しております。日本酒の生酒や吟醸酒など、フレッシュさや繊細さが魅力である酒については、特に酸化に気を使う必要があります。一般的に、こうしたいわゆる「冷酒」向きのお酒は、開栓前後にかかわりなく冷蔵庫で保管し、開栓後はすみやかに飲みきることをおすすめします。このため当蔵は酒質管理の観点からほとんどの酒を四合瓶で提供しています(新政のホームページより)。

キーワードは四合瓶。そういえば近くのお酒屋さんには、1.8ℓ瓶は置いてなかったような。

 

コンセプト(ワイングラス)

「熟れた果実味」。萬乗醸造のコンセプトです。

日本酒を飲むグラスには様々なものがありますが、醸し人九平次をたのしむのには、ワイングラスをおすすめしています。それは日本酒が持つ要素をより多く、わかりやすく感じ取れるためです。醸し人九平次は栓が閉じられた状態で熟成し、お客様のもとへ届けられます。しかし栓が開かれてからも、新たな熟成をするのです。栓が開けられてからの熟成は、お客様が自由に楽しむことが出来る熟成です。時間と共に変化するお酒の姿を是非、お試しください(醸し人九平次のホームページより)。

キーワードはワイングラス。微発酵の泡と果実味がワインのよう。

 

ビジネスモデル変革

二つの酒蔵とも、これまでは普通酒を大量に生産する蔵でした。ある時期から、世の中に根付いた酒蔵のブランドイメージを覆すべく、酒蔵としての明快なコンセプトを打ち立て、いろいろな改革を行ってきました。仕事のやり方の変革、設備投資、人材の育成。新政では、使用する酵母を、自社でかつて開発したK6号酵母のみに統一する。秋田県産のお米のみを使用する。普通種をやめ、純米酒に特化する。全国から集めた若手中心の蔵人で行う、社員醸造とする。設備投資により、通年での製造を可能にする等です。一方、萬乗醸造では自社栽培米にこだわり、黒田庄で自社栽培した「黒田庄に生まれて、」を商品化。また自社スタッフをフランスへ長期の研修に出し、本場フランスのワインの研究をさせています。コンセプトを明快にし、酒臭さがなく甘味と酸味を感じる旨い系のお酒やワインを好む若者を主要顧客に変え、これまでの酒造りも大胆に変革する。中小企業の経営変革のモデルとなる酒蔵でもあります。今日の夜は、「醸し人九平次」をワイングラスでいただきます。