上司の言葉で変わる・・・?

社会的問題 

1月6日のNHKネットニュース。「社員に違法な長時間労働をさせた疑いで書類送検された大手広告会社の電通について、塩崎厚生労働大臣は”社長1人の引責辞任ですむ話ではない”と述べ、引き続き捜査を進めていく考えを示しました」。夜10時には、全館消灯し、残業時間の削減に努めているようですが、残業時間が減った埋め合わせとして早朝勤務者が増えているとか。仕事のやり方を変えない限り長時間労働はなくならない、社会的な大きな問題になっています。笑えない話しであり、この問題を解決する一つの課題は、サービス産業の生産性向上です。一般に生産性というと、下記の定義のような製造業における生産性を思い浮かべます。それほど製造業にとっては、生産性は非常に重要な経営的課題となっているということです。「生産性とは、投入量と産出量の比率をいいます。投入量に対して産出量の割合が大きいほど生産性が高いことになります。投入量としては、労働、資本、土地、原料、燃料、機械設備、などの生産諸要素が挙げられます。産出量としては、生産量、生産額、売上高、付加価値、GDPなどがあります。通常、生産性というと、労働を投入量として測った生産性(労働生産性)を指すのが一般的です」。一方、サービス産業の生産性はどうでしょうか。

 

サービス産業の生産性

具体的なモノを作っている第1次産業である農水産業、第2次産業である製造業や建設業。これ以外のサービスを提供している産業をサービス産業と定義すると、日本のサービス産業の生産性は製造業と比べて、そして海外のサービス産業と比べて相対的に低いことが指摘されています。国は、サービス産業の生産性向上のため、いろいろな施策も講じ、一昨年(平成27年)には「中小サービス事業者の生産性向上ガイドライン」も作っています。このガイドラインで示されているサービス産業の生産性とは次のような式で表されます。この式に従えば、生産性の向上は効率の向上(分母)により分母を小さくするだけでなく、付加価値の向上(分子)も大きくして全体で生産性を大きくしていくことになります。

しかし、労働集約的と言われるサービス産業では、効率を向上させるとサービスの質が低下することが、往々にして見られます。例えば下記の飲食店の事例は、私たちも実感できるわかりやすい事例です。

マッキンゼー流生産性向上とは

マッキンゼー。「up or out(昇格か解雇)」の原則が適用され、人の成長に見合ったパフォーマンスが要求される働き方の厳しいコンサル会社。この会社の生産性を上げるやり方を紹介した『生産性』(伊賀泰代著)から、サービス産業の生産性向上のポイントを三つ引用してみたいと思います。まずは、生産性向上へのプロセスです。

二つ目は、生産性向上のための4つのアプローチ。

 

三つ目が、生産性向上により人の成長サイクル。

上司の言葉で変わる生産性

職場で人が成長する要件とは、人が仕事の生産性を上げ、目の前の仕事だけでなく、今後の成長のための投資や新しいチャレンジもすべて労働時間内でやりきれるようになること。そして組織で生産性を評価出来ていること。部下が素晴らしい資料(企画書)を上司に持ってきた。上司「この企画書は素晴らしい! ところでこれを何時間かけて作ったんだ?」。部下A「徹夜して作りました」。上司「徹夜?じゃあ、おとといからやっているから全体で30時間ほどかけたのか?なるほど、今回の企画書は本当にいい出来だから、次はこのレベルの企画書が半分程度(15時間)の時間で出来るようになったら一人前だな。そうなったら凄いと思うよ」と褒める。反対に部下が「5時間で作りました」と言ってきたら、「それだけの時間でこのレベルの企画書を完成させられるなんて素晴らしいな。どういうやり方で情報収集や分析をやったのか、是非、次の会議で皆に方法論を共有してくれ」と褒める。日常的にこういう褒め方をしていれば、本人は勿論、それを耳にする全スタッフが「どうやったらより短い時間で高い成果を出せるようになるか」と考え始めます。このようなサービス産業の生産性向上が日常化した職場になれば、電通問題はなくなるのでしょう。課題解決の第一歩だと思います。