不確実性を考えるアプローチとは

事業の不確実性

新規事業を含め、ビジネスの世界では、事業は計画どおりいくことは、ほとんどありません。なぜなら事業はもともとこれまでの経験値や過去のデータ、資料にもとづき「こうなるだろう」「こうなるはずだ」という仮説をもとに計画を立てているからです。この仮説には、ある一定割合の不確実性が必ず存在します。ということは、仮説の精度を上げ、不確実性を減らすことによってリスクを小さくして事業をやることは可能だとも言えます。

 

いくつかのフレームワーク

『ケースで学ぶ意志決定の手法 不確実分析』(福澤英弘/小川康著)には、ビジネスの成功確立を高めるための不確実性分析手法として、意思決定のための多くのフレームワークが紹介されています。どれも参考になるフレームワークですが、その中でもアイディアを形にし、モデル化して定量化するフレームワーク、「インフレンスダイタグラム」と「モデル化」、「定量化」を取り上げ、身近なビジネスを例にして考えてみたいと思います。

 

「インフレンスダイタグラム」

こんなアイディアを持っている。独立してビジネスを始めたい。食っていけるだろうか。創業支援で出会う相談は、この段階の相談が多い。漠然とした新規事業のアイディアを具体的な段階へと進めていくためには、事業のゴール(利益や粗利など)を決め、そのゴールを構成する項目、言い換えればゴールは何によってもたらされるのか、を書きだして矢印で結んでいく。最終的なゴールが、どこから来るのかを遡って事業全体を図示したものを「インフルエンスダイヤグラム」と言います。そして、各項目に数値を入れ、項目間の計算式によって最終ゴールの数値を計算できるようにしたものは「モデル化」。キーとなる項目の数値に幅を持たせ、最小値(最も悪いケース)と最大値(最も好ましいケース)をシュミレーションできるようにしたものは「定量化」。

「モデル化」「定量化」

脱サラして独立し、インターネットで中古のアンティーク家具を仕入れて販売する事業を架空のケースとして設定し、「インフルエンスダイヤグラム」、「モデル化」、「定量化」を考えてみます。仕入販売する商品は、簡略化して5点。平均値として販売単価は3万円、販売数量50個(月)としています。事業のゴールは利益。これを基準値として、赤字にならないこととします。すなわち、創業者の人件費(給与)を賄える粗利を確保することです。事業の不確実性(ゴールの不確実性)を左右するキーとなる項目は仕入率。これを変動幅65%~85%として、最小値(最も悪いケース)と最大値(最も好ましいケース)をシュミレーションします。結果、70%で仕入できれば、事業のゴールは達成されるが、これ以下であれば、経営者の給与を削減せざるを得ない。いかに安く仕入できる仕入ルートを確保するかが、当事業の成功のCSF(重要成功要因)となります。事業のアイディアからは、この程度まで不確実性のリスクを考えるアプローチが必要となります。特に難しい計算はしていません。Excelを使って、インフレンスダイヤグラムで示された関係項目間の計算式に数値を入れるだけです。これから新規事業を考えている方、是非、トライしてみてください!