ITスキル向上研修で伝えたいこと・・・

中小企業を概観する

経済産業省の資料から中小企業・小規模事業者を概観してみます。中小企業は、日本経済を支える存在であり、全事業者数の99.7%が中小企業。そして全就業者の約70%が中小企業で働いている。大都市以外の大半の地域でみると、中小企業・小規模企業で働いている割合は、80%以上である。これらの地域を担う中小企業・小規模事業者も時代とともに変化し、近年は小売・サービス業のウェートが拡大している。直近では、黒字中小企業は80万社程度、比率では3割程度。日本再興戦略では黒字中小企業・小規模事業者140万社を目標としているが、中小企業・小規模事業者の生産性は伸び悩んでおり、大企業との差は拡大している。

 

生産性向上のためには

企業の従業員1人あたりの生産性(労働生産性)は、労働生産性=付加価値額

/従業員数(平均)で表されます。経済産業省の平成28年2月改訂版「中小サ

ービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」には、この労働生産性を

向上させるためにはとして、次のようなことが書かれています。生産性向上

のためには、付加価値額の増加が必要である。付加価値額=営業利益+人件

費+減価償却費で計算される。では各要素はどうようにして大きくすればよ

いのだろうか。

・営業利益

本業で収益を出せる体質にすること。そのためには、経営管理(売れ筋商品の

把握など収益を管理すること。新商品開発、マーケティング・販路開拓等の

多様な活動が想定されると。

・人件費 

高い付加価値が出せるように人材確保・人材投資を進めること。

・減価償却費

新たな需要を取り込むように設備投資やIT投資を進めること。そしてIT投資については、「ITはうまく活用できれば生産性、売上の向上につながるが、大企業に比べて中小企業・小規模事業者の情報関係支出は少ない。今後、攻めの投資を進める際には、ITの更なる活用も重要ではないか」と。

 

ITスキル向上研修

中小企業を会員に持つ商工会議所、中小企業の中でも小規模事業者が会員に多い商工会。北は北海道から南の沖縄まで、全国を9つのブロックに分け、9人のITコーディネータがブロック講師として全国の商工会議所・商工会の経営指導員向けに、生産性向上のための「ITスキル向上研修」を9月から実施しています。北信越ブロック5県は私が担当することになり、先日、新潟県で研修を実施してきました。この研修は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が主催し、ITコーディネータ協会が講師を委託され実施するものです。小規模事業者のIT利活用の見本となる事例研修、経営指導員が現場で実践して欲しいIT・Web利活用実践研修、そして最後は情報セキュリティ研修。中身の詰まった高度な内容の6時間研修です。

 

伝えたい3つのこと

「ITスキル向上研修」で経営指導員の方に伝えたいことは、3つあります。

(1)経営課題・業務課題の解決には、まず人間系の解決策を検討する。

ITありきではなく、「人間系の解決策」を中心に考え、その人間系の解決策

を支援するモノとして必要な設備とITでの解決策を考えることです。人間系の解決策には、組織、業務ルール、業務プロセス、そして人のスキルと意識があります。

・組織

⇒組織体制を変更(新設・統廃合)して、解決できないか。

・業務ルール

⇒業務規程・業務手順書・業務マニュアル等を整備し、作業者と管理者の別、照合突合・確認・承認などにより、解決できないか。

・業務プロセス

⇒業務機能として必要な業務の追加・不要な業務の廃止などにより、解決できないか(アウトソーシング含む)。

・スキルと意識

⇒教育訓練・研修・新規雇用等、業務を実施する関係者の業務スキルの取得・向上や、遂行時における意識改革を図ることにより、解決できないか。

(2)専用システムの導入ありきにならないように。

IT導入の予算確保が難しい小規模事業者に対しては、IT・WEBを利活用して実現できるレベルと、費用対効果を想定してアドバイスすることが大事です。

選択肢は、具体的なパッケージソフトやクラウドサービス等を調査すること。更にはEXCELなどの汎用アプリ、あるいは手き管理なども含め、様々な活用ケースを検討します。そのためには、常にITに関する情報収集(成功事例、クラウドサービスなど)を行い、IT専門家との日頃のコミュニケーションを心がけ、IT・WEB利活用のアイディア出しが出来るようにしてください。

(3)身の丈にあったIT利活用

企業の身の丈は「IT経営成熟度」で調べます。ITの利活用が上手くいくため

に必要なことは、「IT経営成熟度」の指標の一つである経営者のIT経営マイ

ンドを高めることです。経営指導員の方の外部刺激におり、経営者の「IT経

営マインド」を高めてください。経営指導員の方にお願いしたいことです。