創業支援で考えること

若者のIT創業

幾人かの若者がITに関わる創業を考えています。TJさんは、県内初めてのWeb上での空き駐車場の予約マッチングサービス。NSさんは、企業のニーズが大きいと考えられるITサービス代行業。NHさんは、得意とする製造業のITシステム導入、運用支援サービス。SEさんは、これからの需要が多い中小零細企業向け情報セキュリティ対策支援ビジネス。そして、MKさんは地域企業向けキュレーションメディア提供サービスを。これらは、私が福井県の創業マネージャーとして支援した若者たちです。現在も継続して、創業の立ち上げまで支援をする予定です。

 

創業者に欠けているもの

創業についての相談に訪れる人たちに共通しているのは、自分が本当にやりた

いこと自分にとって大切なこと、これをミッションと呼びますが、強さの程度

はあれ、ミッションに近いものは持っていることです。しかし、これを実現す

るための方法、いわゆるビジネスモデルが曖昧であり明確になっていません。

ビジネスモデルを考えるとき大事なことは、まずは自分が創業しようと考えているマーケットの状況を知ることです。業界や同業者の状況を調査し、マーケットでの立ち位置(狙うべき市場、ターゲットとする顧客)を定めます。次に、提供しようと考えている商品・サービスがお客様のニーズに合っているか、差別化ポイントは何か、を明確にすることです。これらのことは、必須の作業です。

Jカーブ

ベンチャービジネス(広義で新規創業ビジネス)の世界では、「Jカーブ」という言葉がよく知られているようです。立ち上げた事業がすぐに売上や利益につながるのは極めて稀で、しばらくは耐え忍ぶ時期が続く。その時期を凌ぎ、浮上のキッカケをつかむことができた創業者だけが、その後大きく成長していくスタートラインに立てる、というものです。『一生を賭ける仕事の見つけ方』(齋藤祐馬著)では、この「Jカーブ」を乗り越えることができる創業者には、3つの資質が備わっているとしています。一つは自分が本気で事業に取り組んでいることを言葉と背中で示す「マインド」であり、二つ目はビジネスモデルを組み立てて遂行する力「経営力」。そして三つ目は、組織内外の人とのつながり、人脈の豊かさ「ネットワーク」です。

 

ボトムからの押し上げ支援

この「Jカーブ」を思うと、創業支援マネージャーとして考えることがあります。ミッションを持ち創業をしたいと思う人たちの腰を折らずに、勇気づけ、背中を押してあげることは必要です。しかしJカーブのボトムからいかに元のスタートラインに戻してあげるかは、それ以上に重要なことだと。創業支援でどれだけで創業者を輩出できたかではなく、どれだけ廃業せずに創業を継続できたか。国・県の施策は、後者の指標にも力点を置いて欲しいと思っています。日本は相変わらず、創業より廃業が多いのですから。