創業を考えているあなたへ

創業マネージャー

福井県の創業マネージャーに委託されてから半年、創業を目指す方、すでに創業に一歩踏み出した方を含め、いろいろな方から相談を受け対応してきました。この間、相談対応の場でお話ししてきたことががあります。「あなたが商品・サービスを提供する顧客は絞り込めていますか。あなたの商品・サービスの強みは何ですか」。言い方を変えると「あなたの商品、サービスを欲している人は見えていますか。あなたの商品、サービスを選んでもらえる理由を考えてみましたか」と。もっと突っ込んで、「どのようなお客様に、どのようにして、ニーズのある商品やサービスを販売してくのか。どのような設備を使い、人を雇用し、どんな活動をしながら、誰と協力関係をもち、ビジネスをしていくのか」。いわゆるビジネスモデルを考えましょうと・・・。

 

行列ができるわけは?

福井県永平寺町(旧松岡町)にある「けんぞう蕎麦」、11時過ぎには行列ができるそば屋さんで有名です。駐車場には県外Noの車も多く、そばの美味しさは県外にも知れ渡っているお店です。うどんでは、大阪の「釜揚げうどん一忠」さんが有名ですね。7月で惜しまれながら店を閉じました。ここも長い行列ができる人気のうどん店です。どちらも、メニューは一つです。10割そばに大根おろし又は辛み大根汁につけて食べる「けんぞう蕎麦」。讃岐うどんの釜揚げうどんに薬味をつけて食べる「釜揚げうどん一忠」。単品で勝負できる商品を作り上げたところに、行列ができるお店の理由があるのです。

 

顧客の絞り込みと提供する商品価値

そば屋の商売のやり方(これを事業ドメインと呼びます)は、3つに類別することができます。一つは、家族で気楽に安く食事をしたい人を顧客とし、そばの他にそば+丼、そば以外にも多くのメニューをそろえて家族が満足できる食事を提供するそばチェーン店。このそばチェーン店の顧客の特徴は、そば屋だけなく、いろいろなお店に行くことです。二つ目は、昼にはそばを食べたい人を顧客とし、商品としてはニ八蕎麦を素材とした天ぷらそば、ざるそば等のそばメニューを提供するそば専門店。このそば専門店の顧客の特徴は、この店より美味しいそば専門店ができると、これまでの顧客は新しい店に移ってしまうことです。最後は、蕎麦のメニューは単品でも、そばの美味しさを堪能したい人、そばの味のわかる人を顧客とし、これまで食べたことのない、美味しいそばを商品として提供する店です。この店こそ、「けんぞう蕎麦」なのです。顧客の特徴は、並んでも食べたい、蕎麦がたべたくなったら必ず行く、人に教えたい、お客様を招待したい。力強いリピーターです。「けんぞう蕎麦」の食べログ投稿には、「細くて綺麗なお蕎麦は、つやつや光って眩しい!お蕎麦は凄い弾力で、跳ね返ってくる感じ。これほど弾力のあるお蕎麦は初めてかも?後を引く美味しさで、直ぐにまた食べたくなります」。

 

成功したビジネスモデル

幅広いターゲット顧客に対し、そこそこの商品価値を持った商品を提供したビジネスをしていると、どうなるのでしょうか。当初は顧客に選ばれても、競合店ができると次第に選ばれなくなります。「けんぞう蕎麦」のビジネスモデルは、限られた経営資源で、そば以外の商品は作らず、そばという単一商品に経営資源を集中し、商品開発をする。ターゲット顧客はそばに拘る人に絞り込み、提供する商品(そば)は、ずば抜けた価値を持っている。そのため、顧客が営業チャネルとなり、リピートし、口コミしてくれる。まさに成功するビジネスモデルのお手本です。