「混ぜる」は難しい

M君との会話

先日、福井駅の待合室で、久しぶりにM君と会った。彼は高校の同窓生で、同窓会(39会)の会長でもあります。そして、東証1部に株式上場している前田工繊株式会社の代表取締役社長。M君とは、前田征利君です。「今年の年賀状の言葉、いいね!」と私。「今年の39会の新年会、来てくれよ」と彼。しばし立ち話しをし、私は金沢へ彼は関西方向へと上下別々のJR電車へ。

 

技術を混ぜて、事業転換

繊維産業が集積している福井県は、繊維王国と呼ばれています。昭和60年の未曾有の円高不況を経験した福井の繊維産業は、設備共同廃棄事業による構造調整を実施し、新合繊織物の開発や非衣料分野への転換により、危機を乗り切ってきました。いち早く非繊維分野に事業転換し、東証1部に株式上場を果たした前田工繊(株)は、土木技術と繊維の特性を融合させ、全国有数のジオテキスタイルメーカーとして市場から大きな期待を寄せられています。今ではジオテキスタイルにとどまらず、産業資材、農業用品・鳥獣対策品、自動車用ホイールなど、事業の多角化を推進中です。

 

イノベーションは混ぜるから

彼からもらった年賀状に書かれていた言葉は「混ぜる」です。前田工繊(株)ホームページのトップメッセージには、「前田工繊は混ぜる会社です」と書いてあります。人と技術を混ぜる会社です。混ざると化学反応が起きるのです。イノベーションは化学反応の果実。世界一のイノベータを目指し、社会のあるべき姿、人間のあるべき姿を追い求めていきます。

 

日本の村社会を混ぜる

技術は混ぜると出力が変化、化学反応が起きます。繊維と土木の技術を混ぜる(融合)ことにより、ジオテキスタイルが生またように。組織と組織、人と人とが混ざるとどうなるでしょうか。組織横断的なプロジェクトや思考パターンの異なる人によるチームビルディングによって、イノベーショナルな商品が生まれることがあります。しかし省庁の縦割りがいまだに崩れないように、組織は自組織の論理を押し通そうとして、組織と組織を混ざることは難しい。日本の村社会(企業も含め)では組織内の構成員である人は組織に縛られる。したがって、人と人が混ざることも難しい。彼と私の結論でした。だからこそ、彼は「混ぜる」を年賀状に書き、そして会社のトップメッセージにしているのでしょう。