変えてはいけないこと、変えるべきこと

補助事業とITCの役割

一昨日(12月18日)、平成27年度補正予算案が閣議決定されました。経済産業省関係予算では、「総合的なTPP関連政策大綱」関連 や「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」関連事業として、次のような補助金が盛り込まれています。

・ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金 1020.5億円

・小規模事業者支援パッケージ事業 100.0億円

・中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業 5.0億円

これらの補助事業の申請をお手伝いしながら、IT経営支援のきっかけとしているITコーディネータ(ITC)も多くなっています。小規模事業者支援パッケージ事業や中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業には、少なからず、ITを活用した中小企業の競争力向上という課題があるからです。

 

変わる企業のIT利活用

企業のIT利活用の形態が変わってきています。これまでは、ITは自社で開発・保有するもでした。しかし今では、ITがクラウド化し、多くのクラウドサービスが提供されてきて、何でもかんでも開発しないと、という時代ではなくなりつつあります。企業の競争力向上、課題解決のために既存のどんなクラウドサービスを選択し、活用すればよいのか、を考えるることが重要になってきました。その答えは、企業の現状や経営者の考えによって千差万別。企業にあった「経営を変えるIT」を一緒に考える専門家が必要なのです。ITCは経営者側の立場に立ち、企業の競争力を高めるために、IT利活用を考え実行に移す支援をします。クラウドサービスの時代は、これまで以上に、「経営を変えるIT」を一緒に考える専門家として、ITCの存在は大きくなっているのです。

 

ITC-PGL

企業がIT経営を推進する際の基本的な考え方を、多様な業種・業態、規模・成熟度の企業にも適用可能な汎用的な形で、「基本原則」と「プロセス」として取りまとめたものがITC-プロセスガイドライン(通称、ITC-PGL)です。当ガイドラインは、ITCにとって、企業のIT経営実現を支援する活動の判断基準(基本原則)と実行基準(プロセス)を示すものとも言えます。前述したように、クラウドサービスやモバイルの進展により、企業のIT利活用の形態が変わってきています。さらにIT利活用の目的も、企業の製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革をとおして、新たな価値の創出や競争力の強化を目指す、いわゆる「攻め」のIT利活用に変わってきました。このような企業を取り巻く環境の変化に対応すべく、ITコーディネータ協会(ITCA)は、ITC-PGLの改定を進めようとしています。ITC-PGLは、IT経営を実現するための経営戦略からIT活用までのプロセスと基本原則、そしてプロセスにおいて参照されるべきフレームワークや使われる手法などもプロセスとともに記述されています。

 

プロセスは3つの「ル」の連鎖

経営には3つの「ル」が必要です。一つ目のルはルール。これは業務を効率よく遂行するための業務ルール。二つ目のルはロール。これは明確化された組織や人の役割です。最後のルは、ツールのル。最適なツールとしてのITやフレームワーク、手法を選択し、活用すること。そして、これらの「ル」は経営のプロセスの中で連鎖しながら経営の成果を上げていきます。ITC-PGLは、IT経営を実現するプロセスであり、プロセスの基本原則です。ツールとしてのITを経営の視点で考え、IT利活用の方法を示したものではありません。変えるべきは、ITの変化や企業環境の変化に対応した、プロセスを実現するための参照すべきフレームワークや手法など、ツールの「ル」です。IT経営に必要な3つのルールの連鎖を創り出す根幹的なプロセス、これは安易に変えてはいけない。私の考えです。