若手後継のイノベーションが地場産業を活性化

地場産業の今とこれから

政府が声高に叫ぶ、地方創生。その地方創生のキーとなるのは、地域の地場産業の活性化です。今日まで全国の地場産業は、生き残りをかけた厳しい取り組みを行ってきています。燕市の地場産業は洋食器。この洋食器の金属各加工業者による「商売敵を仲間にする、系列を超えた横の連携」は、従来の地場産業や企業の常識を覆す大きなイノベーションとして有名です。京都の西陣織も伝統的な地場産業であり、着物の需要が落ち込む中、どのように生き残っていくか、模索が続いているようです。しかし個別には、着実に業績を向上している企業もあります。私の次女が嫁いだ西陣織メーカー、宮階織物もそれらの企業の一つです。


西陣織とは

西陣織の特性を一言でいえば“多品種少量生産方式による先染の紋織物”ということができます。この特性を十二分に発揮するためには、織物の優れたデザイン創造力と、織物としての表現・加工力が必要となります。デザインが決めてとなる織物、それが西陣織です。東京のアパレル企業を経験して実家の西陣織メーカーに入った女婿。彼からは、西陣織の可能性、事業の立ち位置など、しばしば話しを聞くことがあります。


デザインとデジタル技術のイノベーション

「アニメ?文様が動く着物 京都市産技研など特殊織物開発」。今年の2月、京都新聞に掲載された記事です。京都市産業技術研究所と西陣織の宮階織物が共同で、着物の文様がアニメーションのように動いて見える特殊織物を開発した。織物としてだけでなく、小紋や訪問着などに仕立てて5月から販売を始める。和装の新たな楽しみ方を提案する。動きは、上下2枚の織物を重ねて表現する。上部の織物の切り込みがずれることで、下部の織物に描いた三つの文様が交互に浮かび上がる仕組み。切り込みは、幅1センチ前後で、着物の裾などに数百本並べて使う。アパレルメーカー勤務の経験がある同社の宮階幹久専務が、洋装業界と同じように織物の可能性を広げるため、昨夏から試作を重ねてきた。京都市産業技術研究所は、ソフトウエアで三つの文様の見え方をシミュレーションするなどデザイン開発に協力した。歩くネコや舞うチョウ、流れる水など数パターンの文様を完成させた。同社は、文様を効果的に見せるため、上下2枚のデザインを精密に合わせて織るのに苦労したという。宮階専務は「従来の着物になかった、誰の目にも分かりやすい立体的な表現を若い人に楽しんでほしい」と話す。


動く着物

先日、京都東福寺の紅葉を観にいったおり、女婿である宮階幹久君から聞いた話しです。京都新聞に掲載された記事を見て、今最も注目を浴びているファッションデザイナー森永邦彦氏が会社に来たと。憧れの人である、あの森永邦彦氏が自分がデザインしたモノを評価してくれ、会社まで会いにきてくれる。そして商品開発をコラボしようと言ってくれる。感激だったと。森永邦彦氏の会社ANREALAGE(アンリアレイジ)が発表する作品には、色が動く服、サイズが変わる服、聴く服、影をまとう服など、従来の服の範疇を超えたモノが多い。次は、模様が動く服が発表されるのでしょう。西陣織の着物という、大きな価値を持った伝統ある商品を守りながら、イノベートな商品も開発している女婿。伝統を守りつつイノベーションを起こす、そんな若手後継者が地場産業を活性化する。私は実感しました。