箱から出る、他人の靴を履く・・・

二冊の本

人と組織にイノベーションをもたらす画期的なアプローチ、考え方「U理論」が注目されています。この手の本は、最初から分厚い翻訳版を読むと、眠くなって途中で投げ出してしまいますから、まずは概要をつかむため『マンガでやさしくわかるU理論』からです。U理論の概要を読んで、想い出しました。昔、似たような考え方の本を読んだことを。今から14年前、2001年に翻訳出版された本『箱』です。二冊の本から得た感想をまとめてみたいと思います。

 

U理論

『マンガでやさしくわかるU理論』を要約すると、こうです。誰もが頭をかかえる人と組織のやっかいな問題も、これまでと全く異なるアプローチにより、対症療法に終わらない本質的な解決をもたらすことができます。U字型の谷をくぐりイノベーションを起こすU理論は、ただ、ひたすら観察する(センシング)。一歩下がって内省し、内なる知が現れるに任せる(プレゼンシング)。素早く、即興的に行動に移す(クリエイティング)。センシングからプレゼンシングの状態にたどり着いたときに「未来」が出現し、そこから得た直感やインスピレーションによりイノベーションが現実化していくと。言葉にすると難しいですが、このマンガ本はやさしくわかりやすく書かれています。U理論は、過去から学ぶ「過去からの学習」ではなく、心の内側から滲み出てくる未来から学ぶ「出現する未来からの学習」によって問題解決、イノベーションが実現できるとしています。


『箱』は、ある人から勧められ読んだ本です。自分よがりな考え方、生き方を見つめなおしてみようという本で、読み終えて、すごく感銘したことを憶えています。原書が「リーダーシップと自己欺瞞」というタイトルであるとおり、一人の管理職が啓発されていき、リーダーとはどうあるべきかが書かれた本でもあります。人は自己欺瞞や自己を正当化して、自分の小さな「箱」に入ってしまう。箱から出て共に仲間に加わらない限り、自分と一緒に働いたり、生活している人間のことを知ることはできないんだ。あなたの人間関係やビジネスが上手くいかないのは、あなたが箱に入っているからでは? ビジネスシーンでの人間関係を改善して生産性をあげようということが本書のねらいです。リーダーのあるべき姿として、みんなが進んで従いたいと思うのは、箱の外に出ているリーダーなんだと。


内面の在り方

箱から出て、他人の靴を履いて考える。すなわちリーダーとして人や組織の問題を解決するには、自分の殻から抜け出て、過去から学習した思い込みを捨て、他人の視座に立ってものごとを考える。問題解決やイノベーションの実現は、やり方ではなく人の内面の在り方に依存すると。これが二つの本から学んだことです。「箱の外に出ることができると、自分を正当化しようという考えや感情から解き放たれるんだ」。「未来が出現するプレゼンシングは、執着を手放した後で訪れる深い静寂と一体感」。出来そうでできない、考え方。だからこのような本がいつに時代にも読まれるのでしょう。