本質を捉えやさしく説明するのは難しい・・・

ITの新しいテクノロジー

ITの進化は留まることなく、次から次へと新らしいテクノロジーが生み出され、耳慣れない新語として私たちの前に現われます。それがためにITは、人との壁を高くし、心の距離を遠くしている気がします。クラウド、ビックデータ、ウエアラブル、IoT、仮想化などなど、言葉として聞いたことがあっても、「それがどういうものか」、「私たちの仕事や生活にどのように役立つのか」をきちんと知っている人はそんなに多くないでしょう。こんなものわからなくても自分の仕事や生活に関係ない! しかし近い将来、関係ないとは言えない状況になってくるのは間違いありません。これらのテクノロジーは、社会的要請があって生まれたものであり、私たちの仕事や生活に深く関わるようになってきたからです。


第3のプラットフォーム

ITの調査会社IDCは、今起きている大きな変化を「第3のプラットフォーム」と名付け、次のように言っています。「ITの世界では10年~20年ごとにプラットフォームの変化が起こります。第1のプラットフォームは、1964年頃から始まったメインフレームと端末の時代。第2のプラットフォームは、Wintel(Microsoft + Intel)やLotus Notesが隆盛したクライアント・サーバシステムの時代。そして、第3のプラットフォームは、クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャルの4つの要素で構成される」。では現在から近未来の新しいプラットフォームとなる第3のプラットフォームでは、これらのテクノロジーは人間で例えるとどのような役割を果たしていくのでしょうか。『最新ITトレンド』の著者斎藤昌義が著書の中で書いている内容を紹介します。


・感覚器としての「スマート・デバイス」

日常の生活や社会活動は、PCやタブレットに加え、モノに組み込まれたセンサー(IoT)、スマートフォン、ウェアラブルなどによりデータ化される。ソーシャル・メディアも会話の内容(流行や話題、製品やサービスの評判、地域と話題との関係など)や人のつながり(ソーシャル・グラフ)といった情報をもたらすデータ生成の仕組みと捉えることができる。IoTを含むスマート・デバイスは、「現実世界をデータ化」する大きな仕掛けになろうとしている。

・神経としての「インターネット」

インターネットは、スマート・デバイスから生成されたデータをクラウドに受け渡すと共に、クラウドで処理された結果を現実世界にフィードバックする神経としての役割をはたす。ここには様々なテクノロジーのトレンドが見て取れるが、ウェアラブルとスマートフォン、あるいは、センサーデバイスと周辺機器とを繋ぐ「近接通信技術」、広域に広がるデバイスをワイヤレスで繋ぐ「モバイル通信技術」、大量に発生するスマート・デバイスからのデータを効率よく転送する「大容量高速通信技術」が注目される。

・大脳としての「クラウド」

スマート・デバイスから生成される膨大なデータはビッグ・データとなる。その大半は、センサー、会話、画像などの非構造化データとなるだろう。これらを管理するNoSQLデータベースの需要は拡大する。ビッグデータとして集まった現実世界のデータは、分析されなければ、活かされることはない。そのための技術として、人工知能が重要となる。人工知能は、ルール・ベース方式と言われる人間の作った規則に基づいて処理されるものから、ビッグ・データを解析することで機械が自律的にルールや判断基準を作り出す機械学習方式が主流となるだろう。この方法を使い、ビッグ・データに内在するノウハウ、知見を見つけ出し、整理すると共に、最適化のためのアルゴリズムを作り出すと言った処理が行われる。分析で処理された結果は、機器の制御やユーザーへのアドバイス、レコメンデーションとして、スマート・デバイスにフィードバックされる。広告・宣伝にも使われるだろう。また、手足となる「ロボット」の制御や知識の供給のために利用される。このような処理は、クラウド上の他のサービスと連携し、新たな価値を生みだしてゆく。

・手足としての「ロボット」

自動走行車、産業用ロボット、介護ロボット、生活支援ロボット、輸送ロボットなど、様々なロボットが私たちの日常で使われるようになるだろう。それらは、インターネットとつながり様々な知識や制御をうけ、行動の最適化が行われる。また、それら情報に加え、センサーが組み込まれ、自分自身で情報を収集することやスマート・デバイスと連携しながら、人や周辺環境とやりとりをし、人工知能によって自らを自律的に制御する。 


仮想化技術

先日ある商工団体で会員向けの基幹システム更新のためのITベンダー選定審査会がありました。審査は、RFP(提案依頼書)をもとにITベンダーからの提案をもらい、適切なベンダーを選定するというものです。私は外部専門家として審査を依頼され、参加することになりました。ここで使われキーワードとなったのは仮想化です。道路や鉄道、電気や電話、そして地域の病院や学校は私たちが生活を維持するための基盤です。基盤はインフラストラクチャー(略してインフラ)と呼びます。日常生活を便利にし、なくては不便となってきたITサービス。このITサービスを生み出すインフラをITインフラといいますが、このITインフラが仮想化というテクノロジーによって、大きく変わってきました。電気を使う時、発電所の設備や運用を気にすることがないように、ITサービスを使う時、ITの設備や運用を気にしなくてもよくなってきたのです。これで、電気やITを使って、本来の仕事に思う存分力を注ぐことが出来るようになります。仮想化による本質な効果は、「私たちの仕事や生活にどのように役立つのか」への回答なのです。本質を捉え、簡単に説明することは難しいですね。