「Show and Share」はIT経営のキーワード

経営に役立つIT導入とは

金沢問屋センターの会員の方向けに行ったセミナー「事例に学ぶ経営に役立つITの導入」。セミナーの冒頭、下記のようなことをお話ししました。

経営に役立つシステム導入には「ITありき」ではなく、IT導入の前に必ず実施しなければならないプロセス(手続き)があります。  

 ・経営のあるべき姿、経営目標を明確化する

 ・経営の足元を見つめ直す

 ・やるべきことを見つけ出す

 ・やりたいことを整理する

 ・やりたいことをシステムで実現できることを考える

 ・システム導入に伴い業務を改善する

 ・提案依頼書による投資効果の上がるシステムの調達を行う

当セミナーでは、実存する会社の三つの事例をとおして、経営に役立つシステム導入に必要なプロセスを学んでいただきます。

このセミナーの後半では、最近のIT化の最新動向として注目されているクラウドサービスや国が推進している「攻めのIT投資」、中小企業IT経営力大賞を受賞した企業の特徴につても、お話しをしました。


攻めのIT投資

国は企業の稼ぐ力をつけるため、施策として攻めのIT投資を推進しています。では、攻めのIT投資とは?新事業への進出時における新たな価値を創出するIT投資であり、既存ビジネスの強化によりを利益を拡大する投資です。一方、守りの投資とは?社内業務(間接業務)の効率化や利便性の向上のための投資のことを言います。


「中小企業IT経営力大賞」受賞企業の特徴

経済産業省「中小企業IT経営力大賞」を受賞した企業の特徴を、審査員でもあるITCの高島利尚さんは、このようにまとめています。「個」を重視したビジネスモデルを実現し、多様な要請・変化に迅速・的確に対応している企業である。これらの企業は、受注あるいは見込み情報を出荷まで、一貫して対応できるトータルシステムして整備し、かつクラウドサービスを活用して関係する社員同志が情報共有している。ベンダ主導ではなく、経営者の思いや現場の声が反映された使い勝手がよいシステムになっている。まとめとして、これからの中小企業のIT経営は、激変する経営環境に対し、変化への迅速かつ的確な対応が必要となり、これには攻めのIT投資によるITの利活用が必須である。そのためには、経営者が熱き思いを持って、社員とともに経営の環境分析を行い、経営課題を認識しなければならない。すなわち情報共有による全社員の一体経営が必要であると。


コマツ会長坂根正弘さんの経営

セミナーの間、私の机上にはスクリーンにパワーポイントのシートを映し出すためのノート型パソコンともう一つ、本を置いておきました。その本は『言葉力が人を動かす』(コマツ会長 坂根正著)です。講演のポイントポイントで坂根さんが書いていることを紹介するためです。セミナーで私が真に伝えたいことの多くは、この本に書かれているのです。経営者やリーダーの言葉の力が組織や人を動かす。いかにして言葉に力を持たせ、実行力を高めるかが書かれた本です。坂根さんが社長になり、業界トップであるキャタピラー三菱との利益率の違いは固定費にあるという事実(ファクト)を見つけ、社員と共有し、一度限りのリストラを実行しV字回復を成し遂げる。そして、他社との差別化を図るため、自社の強みを環境・ICT・セキュリティというカテゴリーに絞って見つけ出し、ダントツ商品となったコンピュータ制御建機を生み出す。GPS機能を搭載した建機は東南アジアのどこで動いているか直ぐにわかり、KOMTRAXと呼ばれるシステムにより無人で運転されている。商品価値を高め売上を大きくする攻めのIT投資のわかりやすい事例であるKOMTRAXシステム。コマツで浸透している言葉「Show and Share」(見える化と共有)。大企業ではありますがコマツの経営者(現在は相談役)坂根さんの経営に対する考え方は、中小企業のIT経営に非常に参考になります。