情報のインプットと「1.01と0.99の法則」

 日本全国にはその土地の名前がついた野菜があります。石川県では、加賀野菜と能登野菜が有名です。この二つの野菜が作られる土壌には、大きな違いがあります。加賀野菜は砂地、能登野菜は赤土です。土壌の違いは、栽培される野菜の味覚に違いとなって現れます。さつまいもの品種である高知県の「鳴門金時」という同じ苗から栽培される加賀野菜の五郎島金時と能登野菜として栽培される能登金時。食べ比べてみると、味覚の違いがよくわかります。パサーとした食感とネトーとした食感です。

 

 企業のゴールは、継続的に利益を生み出していくことである。その目的達成のため、企業は戦略を作る。戦略には全社戦略と事業ごとの事業戦略があり、競争戦略は事業戦略を対象にしている。では、競争戦略とは? 他社との違いを作ることである。優れた競争戦略の条件は、構成要素間に時系列的な因果関係があり、論理性を持ち、ストーリーとして人に話しをして面白いことである。違いを作る考え方は二つある。一つはSP(Strategic Positioning)、いわゆるポジショニング。市場、提供する商品・サービスを競争のない又は少ない場所に位置取りすることにより他社との違いを作り、利益を生み出す。しかしSPの弱いところは、他社が真似することが可能であり、同じようなポジショニングをとることによって、競争が生まれることである。もう一つはOC(Organizational Capability)。企業のコアコンピタンスとしての組織能力や仕事のやり方である。OCは長い期間を必要とするが、一度確立すると他社は容易に真似することができない。

 

 冒頭の話と企業の競争戦略の話。二つの話には、なんら繋がりはありません。冒頭の話は、昨日行った能登の旬な食材を求めてのミニ探訪ツアーで、フードアナリシスの方から聞いた話です。競争戦略の話は、『ストーリーとしての競争戦略』(楠木 建著)の極めて短い私の要約(なにせ500ページもある本ですから)です。人から聞いたお話と書籍から入手(インプット)した情報をブログという形式を使ってアウトプットしています。この作業は、人に何かを伝えたい、というよりも、自分の中にインプットされた情報を少しでも長く記憶の中にとどめ置くためなのです。

 

ただ単に人に話ししたり、ノートやインターネット上のブログ、FacebookなどのSNSに書いたりするだけでなく、実践で使ってみることの方が、数倍、長く記憶に残ります。 インプットしたものはアウトプットしないと、自分の血肉とならない。確かにそうだと思います。10数年前、ある資格試験対策研修を受講していたとき、講師から「1.01と0.99の法則」を教えてもらったことを思い出します。たしか一橋大学の某教授(誰だか思い出せません!)の講演での話だと言っていました。この法則は、最近では、楽天 三木谷社長の著書「成功のコンセプト~Principles for Success」に記載され、知っている人が多くなったようです。自分で良かったと思った話や情報は、アウトプットする。そして実践してみる。これらが長い年月のなかで、関連付けされ、自分のOCとなっていく。加齢とともに記憶力が悪くなっている現実を認め、左の耳から右の耳に抜けてしまわないよう、インプットした情報は、必ず何らかな形でアウトプットするようにしています。