このナイフでステーキ食べてみたい・・・

福井県越前市は、打刃物の産地として有名です。ここには伝統的な打刃物を作っている業者が集積していますが、越前打刃物の伝統を守りながら、工業デザインを導入し、時代を先取りした感覚で打刃物に取り組んでいるユニークな存在としてタケフナイフビレツジがあります。刃と柄が一体になったステンレス製のナイフや和式ナイフ、カスタムナイフなどオリジナリティあふれる製品を展示・即売しています。そして、製作工程を見学ができるほか、体験教室で熱した鉄を打つ火づくりも体験できます。大学で金属工学を専攻し、卒業後就職した会社でステンレス鋼の製造を現場で経験してきた私にとって、越前市の打刃物には、特別の思い入れがあります。福井へUターンした頃は、ナイフビレッジで刀鍛冶に刀造りを教わろうと思ったくらいです。

 

 本題ですが、福井県越前市(旧武生市)にある打刃物メーカーが素晴らしい商品を製造・販売しています。このメーカーは、(宥)龍泉刃物。ここで作られたテーブルナイフは、類を見ない驚きの切れ味とこれまでにない斬新で美しい波紋模様がナイフの全面に浮かび上がっています。昨年2月のフランス国際料理コンクールにおいて、審査員25名のナイフに使用されました。そして、あまりの切れ味の良さに、審査員全員がこのナイフを持ち帰ったとか。

 

 2種類のダマスカス鋼と呼ばれるステンレスを70層に重ねたものをハンマーでたたいて薄くし、削り出すことで、刃を手前に引くだけで切れる切れ味に仕上げているのです。昨年6月からホームページで販売。価格は1万8860円(税抜き)と高額ながら、注文が相次いだため昨年12月に受注をストップしているようです。現在も約1千本のオーダーを抱え、受注再開は来年2月ごろになるという。

 

 日本各地の伝統産業を支える中小企業・小規模事業者は、相変わらず厳しい経営を強いられています。私の地元福井県でも、越前和紙、河和田漆器、越前打刃物、眼鏡等、同じような状況だと思います。このような伝統産業の中でも、龍泉刃物のように、ターゲット顧客を富裕層に絞って、付加価値の大きい商品を開発する。これまで蓄積してきた伝統技術と、デザイナー、素材メーカー、木工製品メーカーなど、得意分野を持つ異業種事業者との連携によってなしえた商品開発は、まさに中小企業・小規模事業者にとっての事業変革の成功モデルです。今後は、このテーブルナイフにマッチしたフォーク、スプーンの開発に取り組むそうです。美しい波紋模様の入ったテーブルナイフとフォーク、スプーンで食べるステーキ。なんと素晴らしい至福のときを提供してくれる企業でしょう。声援を送りたい!