凡人がセンスを磨くには・・・

8月22日と23日は、ITコーディネータ(ITC)が、年に1度、東京プリンスホテルに集うITC Conference 2014」でした。私も2年振りになりますが、招待を受けたので参加してきました。安倍総理が来日したオバマ大統領に銀座の高級すし店でふるまったとされる「獺祭」。人気でなかなか手に入らない日本酒とされています。初日には、この獺祭の醸造元、山口県の山あいにある旭酒造の桜井社長の講演がありました。Conferenceのプログラムの中でも、私のお目当ての講演の一つです。

 

 お酒は、基本的には、原料に酵母を加えて糖を発酵させて造ります。ワインは、原料となるぶどうは糖そのものなので、これに酵母を加えるだけでワインを造ることができます。ワインと比べると、日本酒の場合は、お酒を造る工程はワインほど簡単でありません。というのは、原料となる酒米が糖ではないからです。澱粉なので、まず澱粉を糖化する工程が余分に必要となるわけです。この澱粉を糖化する工程に欠かせないのが、米麹です。日本酒造りに大事なのは、「一麹(米麹)、二翫(麹、米、水に酵母を加えた日本酒の元)、三造り」と格言のように言われています。特に麹(米麹)は、日本酒の品質を大きく左右するもので、蔵元の伝統的な方法で、杜氏の職人技によって造り出されるのです。

 

 その杜氏がFA宣言、すなわち他の蔵元に移籍する危機に陥った旭酒造。この機会をチャンスと捉え、杜氏個人の技術依存からの脱却を図るべく、社員を杜氏にするための教育を行った。技術力のない社員を杜氏するには社員の技術力を補う酒造システムによる酒造りしかなかった。小さなタンクを多くしローテクでも美味しい酒造りを可能とする酒造システム。2割3分大吟醸酒は、技術を補う米の磨きから生まれたお酒。まさに、酒造りという事業の変革である。

 

 経営戦略とは? 競合他社との違いを作ることである。戦略にはストーリーがある。戦略ストーリーはセンスに依存する。商売を丸ごと動かす人材、経営者にこそセンスが必要。「ITC Confence 2014」の初日、基調講演での一橋大学院教授 楠木 建さんの言葉です。まさに旭酒造の桜井社長はセンスある経営者なのでしょう。

 

 『センスは知識からはじまる』(水野 学著)、興味ある面白い本です。水野さんは書いています。「普通を知らないことには、センスのいいものも悪いものも作ることができない。センスは生まれついたものではなく、あらゆる分野の知識を蓄積することで向上する。・・・顧客の嗜好が多様化する時代、スキルよりもセンスを磨くことで、仕事を成功させることができる。・・・」。センスは、知識から生まれる。心強い言葉です。センスのないヘボ経営者の私は、もっと知識を習得して普通を知り、そして、少しでもセンスある経営を目指したい! そんな気持ちにさせた、Conferenceでした。