日本酒蔵元の企業革新とは・・・

ここ数日続いた真夏の暑さに、生ビールは格別でした。お酒に強いわけでもないのに、ビールや焼酎、ワイン、日本酒は大好きです。お酒は、気分をよくしてくれます。心の健康によいものです。というわけで、今回のブログは、日本酒について知り得たお話(『めざせ日本酒の達人』山同敦子著)を紹介しながら、お酒づくりと企業革新について、です。私の地元(福井県、石川県)で有名な地酒は、これはあくまで私の主観ですが、福井県では「黒龍」、「凡」、「花垣」、「一本義」、そして嶺南地方の「早瀬浦」でしょうか。石川県では「菊姫」、「天狗舞」、「常きげん」、「万歳楽」、そして能登地方の「宗玄」ですね。これまで、これらの銘柄は全国的にも有名だと思っていました。しかし、『めざせ日本酒の達人』山同敦子著には、これらの銘柄がほとんど取り上げられていないのです。それほど全国には話題性のある日本酒が多いということでしょう。二つほど紹介しますと、最近では、安倍総理が来日したオバマ大統領に銀座の高級すし店でふるまったとされる「獺祭」。1993年、蔵元杜氏がつくって大ブレークした芳醇旨口の「十四代」。今でも人気でなかなか手に入らない日本酒とされています。

 

 お酒は、基本的には、原料に酵母を加えて糖を発酵させて造ります。ワインは、原料となるぶどうは糖そのものなので、これに酵母を加えるだけでワインを造ることができます。ワインと比べると、日本酒の場合は、お酒を造る工程はワインほど簡単でありません。というのは、原料となる酒米が糖ではないからです。澱粉なので、まず澱粉を糖化する工程が余分に必要となるわけです。この澱粉を糖化する工程に欠かせないのが、米麹です。日本酒造りに大事なのは、「一麹(米麹)、二翫(麹、米、水に酵母を加えた日本酒の元)、三造り」と格言のように言われています。特に麹(米麹)は、日本酒の品質を大きく左右するもので、蔵元の伝統的な方法で、杜氏の職人技によって造り出されるのです。

 

 日経の1面、企業の革新力が連載されています。7月9日は、『常に仮説 時代にぶつける』(セブン&アイ 鈴木会長)でした。「革新を生み続ける秘密は何か。難しいことじゃない。世の中の変化を見続けてきたということ。僕は他のお店を見て歩いたりしません。今は人気商品もパッと消える。昔は売れている店を参考にしてもよかったけど今は見ても仕方がない。それだけ変化が激しい。POS(販売時点情報管理)データを初めてマーケティングに使ったのはセブンだ。米国では従業員の不正防止などにしか使ってなかったが、我々は(一つひとつの商品の販売動向を調べる)単品管理に使った。最初から売れたわけじゃない。仮説を立て、試行錯誤を繰り返したんです」。

 

 企業、特にものづくり企業は腕に技術とノウハウを持った職人の技を受け継ぐことで、伝統を守り企業を存続・発展させてきました。しかし、中小零細企業にとっては、その職人が退職し、伝統を受け継ぐことが困難になってきている業種があります。日本酒醸造業、いわゆる日本酒の蔵元です。蔵元での職人とは、杜氏です。そんな状況の中、若くして蔵元に戻り、自ら杜氏になって革新的な日本酒づくりに挑戦している蔵元が、日本全国にいくつかあります。お手本のない、手探りのなかから従来のものづくりのプロセスを見直し、革新的な商品を生み出す。これはまさに、企業の革新と言えます。これらの蔵元の企業革新から造り出された日本酒、「獺祭」磨き二割三分や「十四代」本丸を、是非、飲んでみたい! 蔵元の熱き想いを感じながら飲む日本酒。ますます気分良くなってくることでしょう。