IT中毒の処方箋は・・・

最近、オフイスが静かだ。こんな思いをしているのは私だけではないでしょう。企業を訪問すると、オフイスには一人1台のパソコンが設置され、多くの人はパソコンのディスプレーを見ながら、何やら仕事をしている。そして、社員同士喋ったり、会話している社員は少ない。時たま、電話をしたりはするが・・・。少し前(正確には、一昔前)は、オフイスの光景は違っていた。朝一番は、顧客に電話をかける社員が多く、ひと段落すると、社員と課長は、オフイス内に置かれたテーブルに集まり課の業務打合せが始まる。その間も、部長の遠くから部下を自席に呼ぶ声や、声の大きな上司は、自席から「佐藤君、例の件、どうなった!」などと叫んだり、騒々しいかった。

 

 このようなオフイスの光景に変わってしまったのは、間違いなく企業のIT化が浸透した結果です。情報の共有による業務の効率化と販路拡大を目指しましょう。経営にITを活用しないと、企業は取り残されてしまいますよ。ITを活用したIT経営を推進して、企業を成長させましょう。ベンダーの営業トークとIT化の提案により、ITは多くの企業に導入されました。そして現在は、インターネットとともにITなくして企業経営は考えられないは時代となっています。確かに、企業のIT導入と利活用は、使い方次第ではありますが、経営に大きな効果をもたらします。しかし今、企業のIT化の負の側面が経営の効果以上に問題となっています。遠藤功、山本孝昭共著になる『IT断食のすすめ』は、IT中毒症状は企業に深く静かに進行している、と警告し、IT断食という処方箋をすすめている。

 

 毎朝一番にするであろう仕事は、受信メールのチェックでしょう。自分にとって必要なメールとそうでないメールの振り分けから始まり、返信すべきメールに返信し、連絡をとるべき顧客や報告・連絡すべき上司や同僚に送信する。そうこうしているうちに、午前中もあっという間に過ぎてしまう。午後は、顧客に対する提案資料の作成をする。管理職は、部下から上がってくる日報や報告書にお目をとおし、コメントを書く。管理部からは、業務状況報告を求められ、経営層からは、営業成績の報告と見通しを求められる。どの階層も、パソコンの画面に向かっての仕事に忙しい。溢れんばかりの情報の整理とチェック、必要としない資料の作成に多くの時間を消費しているオフイスでの仕事。これでは、顔を突き合わせてホウレンソをやり、的確な業務判断とアイディアに富んだ企画立案、競合との差別化戦略を立案する余裕が生まれてこない。ITはツールです。データや情報をデジタル化することによって、多くの時間を要する定型的業務や単純作業はITという優れたツールに任せ、空いた時間を人が本来やるべきアナログ的業務(判断、事業企画、戦略立案など)に専念する。これが経営にITを活用する「あるべき姿」であったはずです。

 

 最近では、機械等を設計するのはCADで行います。しかし今、CADで設計する弊害が出ているようで、構想設計はドラフターで、製図化する開発設計はCADでと使い分けをする企業が多くなっているとか。手を動かすことによって、右脳が刺激され、アイディアが出やすくなるのです。またトヨタでは、提案資料は原則裏表1枚にすることを原則にしているとか。1枚に本質を凝集し、無駄な情報はいらない、ということです。私も知らず知らずのうちにIT中毒化しているな、と思っています。情報検索と情報の加工に結構多くの時間を使うし、その分、思考する時間が少なくなっています。ではどうのようにIT中毒を解毒したらよいのだろうか。まづは、パソコンが必要な仕事と、必ずしもそうではない仕事の切り分けをする。パソコンを使わない仕事では、イーゼルパッドに手書きしながら右脳を刺激し、考える時間を多くする。人とのFace To Faceのコミュンケーションを多くする。パソコンが必要な仕事では、過度のインターネット検索に依存せず、現場から価値ある情報を取得する。無駄な資料ストックと冗長な資料作成の時間を少なくする。などなど、明日からやってみよう!