企業のどの階層レベルからIT要求を開発するのか?

企業のどの階層レベルのビジネスプロセスからIT要求を開発するのか? 少々、難しい専門用語が入った書き出しから始めた今回のブログ。クラウド時代となった今、企業のIT投資効果を最大化する上で非常に重要な考え方です。IT要求(システム要求)開発とは、ビジネス上の要求を満たすにはどんなシステムを作るべきなのか、という課題実現のためにIT(システム)に求める仕様を決めることです。

 

 「階層的4モデリング方法論」を10年かけて確立したITコーディネータの渡辺和宣さんは、企業の経営システムの根幹である業務システムには、ビジネスプロセスと組織・人、ITシステムが三位一体として機能することが非常に重要であると言っています。そして、その中のビジネスプロセスを下記のように5階層に階層分けしています。

・階層レベル1(戦略レベル、職責として事業部長)

 ⇒事業を推進するための販売、生産、調達等の事業機能 

・階層レベル2(戦術レベル、職責として部長)

 ⇒生産管理を例にとれば、見込生産等の事業の実施方式の事業機能

・階層レベル3(業務プロセスレベル、職責として課長)

 ⇒販売を例にとれば、受注、在庫等の業務プロセス機能 

・階層レベル4(サブ業務プロセスレベル、職責として係長)

 ⇒受注を例にとれば、受注受付、在庫照会等の業務処理機能

・階層レベル5(システム等の導入レベル 職責として担当者)

 ⇒受注受付を例にとれば、注文受領、注文データ登録等の下位業務機能

 

 IT利用の初期の時代には、ITは業務効率化や自動化のためのツールと考えられていました。そのため、実際にITを利用する上記の階層レベル5(職責担当者)からIT要求をヒアリングしてITを導入することが多かった。結果、一定の業務効率化・自動化は達成されたが、機能の内半分以上は使われないシステムが導入され、運用され続けることになった。これでは経営者にとっては、当然ながら、満足のいくIT投資効果にはならないでしょう。

 

 クラウド時代に今、IT導入のプロセスに変化が出てきました。いろいろなクラウドサービスを利用して階層レベル5(システム等の導入レベル 職責として担当者)におけるITシステムの設計、構築が効率よく安価に可能になるのです。例えば、基幹業務システムのサブシステムとしての人的販売プロセスには「Kintone」、販売管理プロセスには「スマイルα」、生産管理プロセスには「Contexer」を利用して構築した事例があります。しかし階層レベル1から階層レベル5まで、しっかり設計されていることが前提です。渡辺さんの言う、業務プロセスの階層化が出来ていることです。言い換えれば、経営戦略のトレサビリティが可能になっていることです。すなわち階層レベル5を設計・構築すれば、経営戦略が実現するということです。業務プロセスの構造化(階層化)なしに、たんに安価なクラウドを組み合わせ・利用しても、経営効果を生まない、まったくムダ金使いになる可能性もあり得ます。クラウド時代のIT化には、階層レベル5の方法は変わっても、企業のどの階層レベルのビジネスプロセスからIT要求を開発するのか?の答えは変わらない。これが結論です。