断らないことはキャリア形成の第1歩

PGからSE、そしてPMへと。ソフトウエア開発技術者のキャリアパスです。ソフトウエアを開発する業務においては、PG(プログラマー)、SE(システムエンジニアー)、PM(プロジェクトマネージャー)という職種区分があります。PMの力量次第で、開発するソフトウエアの品質や、生産性が左右されるため、PMにはプロジェクトに関するIT技術だけでなく、人とのコミュケーション能力、プロジェクトを推進するリーダーシップ能力など、総合的な能力が要求されます。そのため、ソフトウエアを開発している会社にとっては、社員の中から優秀なPMを育成することは、企業を存続・成長させていくための必須要件となります。

 

 人材成長は人材の育成から。最近文科省は、グローバル人材育成を唱え、人材の社会への出口となる大学改革を推進しようとしています。「政治・経済・文化等の社会のあらゆる分野で進展する急速なグローバル化に対応するためには、基本方針(平成23年9月2日閣議決定)に記載されているとおり”世界に雄飛する人材の育成”が急務である。そのために、我が国の大学に所属する日本人学生を中心とした学生のグローバル化を一気に進展させるべく、グローバル人材育成推進事業による大学の環境整備等が不可欠である。現状の教科の知識を中心としたペーパーテスト偏重による一発試験的入試から、志願者の意欲・能力・適性等への多面的・総合的な評価に基づく入試への転換だ」。

 

 外務省職員佐藤優という名前を憶えているでしょうか。そうです、12年前、当時の外務大臣鈴木宗男に仕えてロシア外交の最前線で活躍し、背任・偽計業務妨害容疑で逮捕された佐藤優氏のことです。現在作家としていろいろな本を書いていますが、『人に強くなる極意』という本が最近出版されました。怒らない、びびらない、飾らない、侮らない、断らない、お金に振り回されない、あきらめない、先送りしない、という8章の章立てで、わかりやすく人に強くなる極意が書かれていて、ビジネスマンにとっては面白い本です。その中の「断らない」の章は、人間が成長するためには、人からの依頼を「断らない」ことだと・・・。人は失敗することへの恐れや、自分の専門領域を伸ばすため仕事の範囲を限定したい理由などから、経験したことのない仕事や余分な仕事を先輩・上司から頼まれると断ることが多い。しかしあえて未知の仕事や余分な仕事を引き受け、過負荷状態に追い込むと、新たな知識を得る努力をして未経験の仕事もこなせるようになり、仕事のやり方を工夫したり、仕事の順序を考えたりして仕事量を増やすことが出来るようになります。このようにして人は仕事に対する自信がつき、成長していくものです。人からの依頼は仕事だけはありません。仕事関係の人との交流、上司からのお酒の席へのお誘い、これらも依頼ごとです。しかし、これは仕事でないから断る、では自分の世界が広がっていきません。

 

 時と場合により「はっきりと断わりなさい」、大事なことです。しかし多面的で総合的な人材像であるPMやグローバル人材へのキャリアパスへの第一歩は、前向きに人からの未知の仕事や余分と思われる仕事も断らわない、異質な人との交流も断らないことから自分を成長させていく。自分の中の世界から抜け出し、異質の世界や価値観を共有する。佐藤優氏の本を読むと、同感する部分が多い。