シニア世代の新規農業を後押しするIT活用

昨年定年退職した、私の友人Y氏。先日、久しぶりにいつもの居酒屋で彼の近況を聞きながら、お互いの夢を語り、楽しい時を過ごしました。今彼は、新規農業に精を出し、生き生きとしています。まだ現役の私にとって農業は、心情的には遠くに感じる、あまり縁のないことです。しかし、リタイアーしたシニア世代にとっては、素人ながら、新規に農業をやることの願望は大きいようです。健康的であり、スーパーで100円で買えるものを手間暇かけて実質200円かかったとしても、自分で育てた野菜などを食べることが出来る喜びは、非常に大きいからです。自民党政府は、成長戦略の一つの柱として、IT総合戦略本部を立上げ、新IT戦略を打ち出しました。内容を見ると、新規農業をやろうとしているシニア世代にとって朗報になるものです。


 新IT戦略案によりますと、「戦略案は、「世界最先端IT国家創造宣言」という名称で、世界最高水準のIT利活用社会を5年程度で実現することを目標にするとしています。具体的には、新たなビジネスの創出を視野に、2016年度までに農業の現場で得られるデータを蓄積・解析して効率的な農作物の栽培方法などを構築し、国内外で展開することや、交通や地理などについての各府省の公共データを一括検索できるサイトを立ち上げて来年度から運用を開始し、公開情報を活用した新たなソフト開発を後押しする」などとしています。


 現在農業分野では担い手の高齢化(216万戸平均年齢65歳)が進んでいます。TPP交渉における日本農業の大きな課題となっているのは、農業経営規模の拡大による農作の効率化、付加価値の高い農作物による競争力の強化と言われています。農業担い手の高齢化は、新規就農者(法人・若者)への農作技術、知識の伝承も必須の課題となっています。政府が推進しようとしている、農業の現場で得られるデータを蓄積・解析して効率的な農作物の栽培方法などを構築し、国内外で展開する、という施策。既に全国の一部の農業現場では、ITを上手く活用して実施されています。


 タブレット・スマホを活用し、日々の作業を畑で記録。千葉県・加賀農園ではITを活用して農作業の成果を上げています。「これまでは、屋外で作業するため、メモを取り忘れることもあった。メモ(紙)記録は、検索がしにくく、情報を活かしにくい。コンピューターは苦手なので難しいものは続かない。これらの問題がある中で、スマートフォーンとクラウドアプリを利用することを始めた。1日に1、2回、作業が一段落したときにスマートフォンを取り出して記録する。記録が習慣になり、データが蓄積され始めた。作業の振り返り、1年前との比較が容易になり、日本全国の農家の方と作業日記の情報交換・情報共有をやることにより、一人で農作業をやる自分の励みになるようになった」。Y氏とは、加賀農園のモデルを福井県でも普及させていきたい! こんな話で盛り上がった飲み会でした。平均寿命も伸び、シニア世代が退職後の第2の人生に費やす時間は非常に長くなっています。スマホを使いこなし、全国の仲間とつながり、楽しみながら農業をする。是非、実現したい仕組みです。