イノベーションの本質は非連続性に・・・

今やAmazonは書籍だけでなく、欲しいものは何でも買える総合ネットショップです。単なる何でも揃うネットショップというだけでなく、これまで経験したことのない小売のネットショップなのです。一度でもAmazonでモノを買ったり、買わなくともAmazonネットショップのホームページを閲覧した人は体験できると思います。自分の好みに合ったモノを勧めてくれる(リコメンデーション)。自分の買いたいものを知っていることに、気持ち悪い感じがするくらい、リコメンデーションは図星です。お客様一人一人に合わせてネットショップの棚揃えを変化させる、このような店はリアルのお店では絶対作ることが出来ません。


 イノベーション(革新)は日本の経済成長にとって重要だ、と言われ続けています。今、いわゆる「アベノミックス」が始動し、日本の成長戦略次第では長かったデフレを脱却し、持続的で安定した経済環境が期待できるかも知れません。『ストーリーとしての競争戦略』の著者、楠木建氏はイノベーションの本質について、次のように言っています。「イノベーションとは単にあたらしいことをやるということではない。進歩とイノベーションとはまったく異なる概念だ。・・・(中略)イノベーションの本質は”非連続性”にある。それも非連続性であったとしても、単純に斬新なだけでは顧客に受け入れられない。イノベーションとは供給よりも需要に関わる問題である。その結果、多くの人に受け入れられて、その結果、社会にインパクトをもたらすのものでなければならない。・・・(中略)イノベーションは、”できるかできないか”よりも”思いつくかつかないか”の問題であることが多い。難しいからできないのではなく、それまで誰も思いついていないだけなのだ」。冒頭に紹介したAmazon、最近は電子書籍(Kindle)も売っていますが、書籍は印刷本を小売するというこれまでと変わらない連続性を維持しています。そして、インターネットの非連続性を活用した”リコメンデーション・ サービス”でお客様一人一人に合ったネットショップを提供するという、これまで誰もおもいつかないサービスを実現しています。まさにビジネス・イノベーションの好事例です。

 

 福井市にフクイカメラサービスという会社があります。デジタルカメラのインターネット修理受付と佐川急便との連携により、365日玄関先まで無料で集荷・配送を実現し、自宅に居てデジタルカメラを修理してもらえるサービスを提供しているのです。ネットショップコンテスト2013のグランプリを受賞しました。修理依頼を受け付けるWebサイトは、グランプリを受賞するだけの素晴らしいWebサイトですが、それ以上に素晴らしいのは、ビジネスモデルです。ビジネスモデルとしてありそうでない。着眼点がすばらしい。修理ビジネスのお手本になるようなビジネスモデル。これも間違いなくイノベーションということができます。


 安倍自民党政権に代わり、昨年度(平成24年度)の補正予算で中小企業、特に製造業に対する1,000億円を越す「もづくり支援の助成金」がつきました。アベノミクスの2番目、3番目の矢に相当する施策です。日銀の金融緩和で市場に溢れ出たお金を設備投資に使い、企業を成長させる。楠木建氏が言っています。A(構成要素)がX(望ましい結果)をもたらす、という因果関係と、BはXを阻害するという概念が業界で共有されているならば、誰もBには手をださない。しかしイノベーションに成功した企業は、誰も思いつかないBという構成要素を中核にした戦略を考えてきた。単に国の助成金で設備を増強するだけでなく、永続的な成長を確実にするフクイカメラサービスのような、イノベーションを実現する事業を考え、助成金を有効に活用してもらいたいものです。