タブレットとスマホによる中小・零細企業のIT化

アベノミクス(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)は最近のキーワードです。アベノミクスによって景気は緩やかな回復基調に入り、デフレ不況を脱出する期待が高まってきました。しかし、中小・零細企業にとっては、喜んでばかりはいられません。今年3月末には、借入金返済猶予を柱とする中小企業金融円滑化法が期限切れを迎えるため、この円滑化法を活用している企業(約30万から40万社)の内、5万社からら6万社にとっては事業再生や転業が必要とされているからです。このような企業に対しては、来年度の施策として経営改善計画の策定支援が予算に盛り込まれています。専門家による改善計画策定にかかる費用の内、3分の2を国が補助するというものです。


 中小企業、零細企業にとってのIT活用の秘訣とは? 先月、『会社で使うタブレット・スマートフォーン2013』という本がリックテレコム社から出版されました。私たちITコーディネータ仲間が支援し、農業や製造業、飲食店まで中小企業がタブレットやスマートフォーンを活用してIT化に成功した事例が掲載されています。中小企業、零細企業にとっての「経営に役立つIT活用」のヒントが満載の本です。単にタブレットやスマートフォーンをパソコン代わりに使うだけでなく、IT投資を小さくするためのクラウドサービスも一緒に利用しているのが事例に共通しているところです。


 農業での活用事例として、栽培記録と他の営農者との情報共有にスマートフォーンを活用した個人農家「加賀農園」の事例を紹介します。野外で作業する農業の現場では、大事なことをメモしたり、必要とする情報を探したりすることが簡単に出来ない。最近では、農作業の技術力向上やお客様のトレサビリティの要望に対応するため、日々の農作業の詳細な記録が欠かせない。これらの課題を解決するため、スマートフォンとスマートフォーン用のアプリケーション「畑らく日記」を使って、日々の農作業を記録するようになった。栽培記録がデータとして蓄積されると、作業を振り返っったり、1年前の状況と比較したりが容易になった。さらに他の営農者とも情報の共有ができるため、農作業の楽しみも増えてきた。今ではスマートフォーンは、加賀氏が目指す農業を実現する大事なツールとなっている。


 いまさらという感じではありますが、企業のIT化の目的は何でしょうか。ITを活用して経営に活かすこと。ではどのようにITを企業経営に活かすのでしょうか。ITは企業の業務を効率化するための費用と考えるか、ITはITを活用して売上向上や顧客との関係強化など、ビジネスを前に進めるための投資と考えるか、企業によって意識の差は大きいのです。中小零細企業にとっては、IT化のためのIT投資負担は決して小さなものではありませんので、IT投資はそれなりの経営効果が見えないと、出来ません。それ故、最低限の費用としてのIT化に留まっているのが現状です。このような中小・零細企業にとって、タブレットやスマホを活用したIT化は大きなビジネスチャンスと成りうるのです。事例で紹介されている中小・零細企業は、費用をかけずに、上手く売上向上や顧客との関係強化に活かしています。これからのIT化は、ハードウエアやソフトウエアを自分で持たない、安価な投資でクラウド上のソフトウエアをタブレットやスマホで使い、経営を前向きに進める時代となってくるでしょう。事業再生が必要とされる中小・零細企業は、安価な投資でクラウド上のソフトウエアをタブレットやスマホを使い、経営を前向きに進めるIT化を経営改善計画に盛り込み、実行したらどうだろうか。ITコーディネータとして支援したいと考えています。