人格適応論、幹部の部下育成は難しい・・・

リーマンショック以来、企業を取り巻く環境は大きく変わりました。さらに日本は、昨年3月11日、東日本大震災・原発事故という、大きな試練も受けました。このような世の中の大きな変化をとおして、企業は、従来の経営の仕組みでは生き残っていけないことを、嫌というほど実感させられました。私たちITコーディネータは、ITの利活用によって経営を革新していきましょう、と中小企業のIT経営を支援しています。しかし社長だけでは企業が変わることはできません。社長の片腕となる企業幹部の意識変革や部下のマネージメント力が必要となります。「幹部が育っていないとIT導入しても成果は限定的」。昨日受講したITコーディネータ協会主催のテーマです。テーマの主要な内容は、人格適応論をベースにした幹部人材育成です。なかなか興味深い内容でした。講師は田中渉さん、小林英二さん。ともに私たちITC仲間です。


 人格適応論にもとづく人材育成について、セミナーでの小林さんの話とホームページからの引用です。 

「上司や部下、妻、家族、他人と接するときに、トラブルにもっともなりやすいのが「相手を、自分と同じ人間だ」と思うことです。トラブルがよく発生する相手の多くは、あなたと違うタイプの人間なのです。人にはそれぞれ個性が存在します。相手が自分と違う個性タイプだと、相手の欲求やモノの考え方、能力、行動パターンは全く異なるのです。それなのに相手の個性を無視し、相手に自分のタイプの常識を当てはめて考えてしまいがちです。残念ながら、違う個性のタイプの人は、自分の思いと全く違った行動、考え方をしてしまいます。結果、相手の期待外れの行動にガッカリしたり、常識外れの行動に怒りを感じるようになるのです。そのようにならないために、人には6パターンの人格があり、それの強弱により「欲求」「能力」「コミニケーションパターン」等が異なってくるという事実を理解する必要があるのです。アメリカ発の心理学である人格適応論は、人のタイプを見極めるための心理学として有名です。そもそも人格適応論は、臨床心理の現場で「人格障害患者」への対応の必要性から、P・ウエアー、T・ケーラー、V・ ジョインズという3人の研究により生まれた理論です。P・ウェアは論文で、人格障害の患者分類を6つに分類しました。①ヒストリオニック(演技型)→興奮、過剰反応、感情不安②強迫観念→完全主義、抑圧的③パラノイド→誇大化、嫉妬、猜疑心、妬み、警戒心④スキゾイド→引きこもり、白日夢⑤受動攻撃→憤慨、過剰依存、妨害、自己中心⑥⑤反社会→社会規範との葛藤、自分本位、無責任、操作的」。「この分類をもとに、患者のタイプを素早く見極め、効果的なカウンセリングを行う為に人格適応論は発展してきました。人格適応論では、効果的に患者にカウンセリングを行うためにの研究が進んでいます。人格障害は特別な人がかかる病ではなく、ストレス過剰状態が続けば誰もがそのようになるという事も分かってきました。現在では、この6つのパターンは一般のビジネスや子育て、普通の人達のコミニケーション強化にも応用がされるようになってきました」。

 

 そこでこの手法を、人事管理向けに整理し、小林英二さんが開発したのがUPシステムです。小林さんは人格適応論で見た人格のタイプを下記のようなわかりやすいタイプにまとめています。

(1)コンシェルジュ型

人に喜ばれることを第一義に考え行動し、「人から喜ばれる」ことを生きがいにしていくタイプ。偉人でいうと、マザー・テレサ。アニメキャラで言えば、タッチの南ちゃん。

(2)発明家型

自分が好きか?・嫌いか?を第一義に考え行動し、「好きなことをやれる楽しい人生を生きる」ことを目指していくタイプ。偉人でいうと、ピカソ、岡本太郎など。アニメキャラで言えば、亀有公園前派出所の両津勘吉やサザエさん。

(3)革命家型

退屈を嫌い、刺激のあることを第一義に考え行動し、「刺激と興奮のある人生、野心が達成できるような人生を生きる」ことを目指していくタイプ偉人でいうと、織田信長。アニメキャラで言えば、ルパン三世の峰 不二子。

(4)哲学者型

自分一人の時間や空間を大切にし、安定して過ごすことを第一義に考え行動し、「野心や野望を抱かずに安定した人生を生きる」ことを目指していくタイプ。偉人で言うと、石川啄木。アニメキャラで言えば、ルパン三世の石川五右衛門。

(5)官僚型

論理性、事実に基づく判断、決めたとおりにしっかりやる事を第一義に考え行動し、「合理的で計画通りの人生を生きる」ことを目指していくタイプ。偉人で言うと、石田三成。アニメキャラで言えば、スタートレックのMR スポック。

(6)任侠型

自分の信念、理念、こだわりを第一義に考え行動し、「信念にこだわった生き方」を目指していくタイプ。偉人で言うと、インドのガンジー。アニメキャラで言えば、宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長。

 それぞれの人格パターンで何が望みか?という欲求も違います。例えば両さんやサザエさんとタッチの南ちゃんは同じような仕事に関しての欲求を持っているか?といえば、当然異なってきます。南ちゃんは「仲間と仲良く仕事をすること」が最優先ですが、両さんは「楽しい仕事をすること」が最優先になってきます。「欲求」が違ってくるので、それによって決まってくる「仕事に対しての能力」も違ってきます。またパターンが異なれば、好きなコミニケーションも異なってきます。よく笑顔で人と話せ!という常識がありますが、実はこれもタイプによって間違っているのです。例えば、南ちゃんのようなコンシェルジュ型には笑顔で接する必要があるのですが、哲学者型の石川五右衛門のような人には笑顔で接することがストレスを発生させたりするのです。つまりタイプが違ってくれば、仕事や会社、上司、部下等の仲間に求める欲求、心理的性格で決定される能力傾向、認知パターン(コミニケーション)が違ってくるのです。これらが違うと言うことは、タイプにより、どうやる気にさせれば効果的か?例えば、「ポイントだけを短時間でガツンと叱る」と、革命家型の峰不二子には効果的ですが、発明家型の両さんは逆に反発をして面倒なことになったりする。どうマネジメントすれば効果的か?例えば、「高い今までにないようなチャレンジングな目標を与える」と、革命家型の峰不二子は燃えてチャレンジしてくれるのですが、哲学者型の石川五右衛門は最初からしらけてしまう。といったように対応も違ってくるのです。


 裏で人を操り政党の破壊と創造を繰り返してきた小沢一郎。これまで誰も彼を意のままに使いこなせた人はいません。石原慎太郎がぶち破りたいと執念を燃やしている日本の官僚機構。裏返せば誰も頭の切れる官僚を自分の意のままに使いこなせていません、ということになります。それほど異能な人を使いこなすのは難しいのです。リーダーの器の大きさとは? 扱える(使いこなせる)個性の数。言い換えれば異能をどれだけ使いこなせるか。会社でもコミュニケーションのとれないミスマッチ部下、問題児部下は20%程度います。20%のうち絶対的にダメな部下は20%、残りの80%は相対的ミスマッチ部下だそうです。相対的ミスマッチ部下とは、上司次第で会社に大きく貢献する部下へ変身する可能性を持った個性の強い部下のことです。幹部(リーダー)の部下育成はストレスの大きい大変な仕事であり、簡単ではありません。個性を見抜き、個性に合った部下育成、これが幹部の部下育成の要諦でしょうか。