地域と家族の絆、生活満足度日本一の県民性

福井県の自慢とする指標には、「生活満足度日本一」や「子供の学力日本一」があります。日本銀行福井支店長松原淳一氏は、著書『福井経済』の中で、なぜ福井県は豊なのかを分析し、生活度満足度日本一のキーワードは地域と家族の絆だと書いています。その結果として、子供の学力も日本一をもたらしていると。家族との絆の強さは、3世帯同居により結婚した女性は舅さんに子供を見てもらい、安心して働きに出る。夫婦共稼ぎ率は日本一高く、夫の収入は全国平均以下でも、夫婦Wインカムにより世帯収入は日本一。老後は、親世代も含めW厚生年金の家計状態をもたらし、経済的余裕が大きい。また職場との絆も強く、日本の終身雇用のモデル県をもいえる。雇用形態も正社員が多く、離職率は小さい。決して賃金は高くないが、企業はその見返りとして、転勤も強要しない、地元で長く働ける環境を提供している。


 福井県の生活度満足度日本一には、地形と気候、宗教が影響している。著書から要約すると以下のことが言えるようです。太平洋側の多くの地域では、沿岸部に産業基盤が集中立地し、山間部から大規模な人口移動によって山間部の農村社会過疎化と都市部は人口の急増が起こった。一方福井県、特に嶺北地方においては、農村で機屋が発展し工業化したため、産業の中心は農業から機屋に変わり、住民は農村に残った。現在の産業の中心は、機屋から工場や商業施設に変わっているが、その多くが沿岸部ではなく嶺北地方のほぼ中央を走っている北陸道8号線沿いに立地している。モータリゼーションが発達した福井県では、農村に住みながら、容易に当然のようにマイカーで通勤しているのです。また気候の影響としては、福井県は日本海特有の冬の多雪のため、農業の中心は「米」に頼らざるを得なく、かつ、一人当たりの耕作面積が小さいため、農業だけでは生計を立てることが出来ない。そのため、副業として繊維、眼鏡、建設業が発展してきた。福井県の人口当たりの社長が日本一多いという一つの理由が、これらの産業構造にあります。家内工業的に発展した産業が、法人なりした結果、法人代表である社長が多いということです。もう一つの影響要因である宗教については、信仰心の篤い県民性があり、特に宗派である浄土真宗は福井県民の過半が信仰している。この浄土真宗の影響を色濃く受け、県内ではいまでも「講」が盛んに行われていて、この講を開くために家は、大きく作ると言われています。


 私の家には、家内が使うための車が1台。子供は二人とも娘ですので、嫁いでいて同居はしていません。家内は、専業主婦です。ときおり孫を見てくれ、と娘に頼まれますが、自分のしたいこと(絵画、テニス)を優先しています。従って我が家の収入はSインカムで極めて少なく、老後もS厚生年金で心配です。そのため私は65歳定年を数年過ぎていますが、まだ働いています。しかもサラリーマンではなく、県外で自分で事業をしています。振返って我が家の状況を見つめてみますと、生活度満足度日本一と言われる福井県の生活状況とはかなりかい離しているようです。そのためか、生活度満足日本一という感覚はあまりありません。


 地元の新聞が連載している記事によると、今どきの若者は、自動車への関心が異常に小さく、車にお金をかけない。車にかけるお金があれば、友達との絆の維持に使いたい。車は単なる足代わり。結婚しても夫婦で1台あれば、それで良し。車に夢中になる若者の時代は遠くなりにけり、の感を覚えます。福井県に住むには車は必須と思われていますが、これらの若者が増えると、単なる思いコミに過ぎないということになるのかも知れません。私がなぜこのような記事を紹介するかといえば、車がなければ不自由する街が本当に生活度満足度日本一といえるのだろうかと疑問に思うからです。満足度感は個人的な感覚なので、そう思う人、思わない人が居ることは必然のことでしょう。しかし、そこに生活をする上で誰しも納得できる指標が欲しいものです。他県の人が行ってみたい街、住んでみたい街、老後の安心な交通体系のある街などなど。2015年3月末には北陸新幹線が開業します。金沢への入り込み人口はますます増大するでしょう。隣県の福井県、とりわけ県庁所在地福井市の存在感の無さが気になるところです。生活度満足度日本一に満足し、自分の街の将来プランに対する無関心さが、福井の顔である福井市中心市街地の再開発が遅れている理由、と思っているのですが・・・。