君はバラの花を15本贈るかい?

 「新たな顧客接点を経営に活かす」。今企業経営者にとって最も大きな関心事であり、重要な経営課題です。一つの顧客に「個」のレベルで対応するためには、フエイス・トゥ・フェイスの顧客対応を継続しつつも、ソーシャル・メディアの利用を増やしていかなければならない。IBMが世界のCEO(社長)を対象とした調査レポート「IBM Global CEO Study」で世界のCEOは、今後の顧客接点として重視する機能としてソーシャル・メディアを大きな割合で挙げています。

 

 先日(8月31日~9月1日)、IBM天城セミナーに参加してきました。セミナーのキーワードはイノベーション。イノベーションとは、物事の新しい進め方で良い方向の変化をもとらすもの。では、ますます複雑化し、変化の激しい経済環境下でいかにしたらイノベーション(事業変革)をなし得るのか。このイノベーションをセミナーの軸骨とした、「明日を切り拓く企業変革~世界に価値ある企業を目指して~」というテーマの1泊2日のセミナーでした。

・高業績企業の事例に見る事業戦略

・新たな顧客接点を経営に活かす

・不確実な時代のリスクマネージメント

・リーダーに求められる決断と実践

新たな顧客接点をどのように経営に活かすのだろうか。サブテーマは、市場から個客視点への変革、”ハイタッチ”と”ハイテク”による顧客接点の強化、お客様により近づくためのソーシャル・メディアの活用、です。

 

 スマートフォン(スマホ)の急速な普及により、スマホを活用して新たな顧客接点を作り出し、実店舗にネットの顧客を誘導している企業がどんどん出てきました。この仕組みは、オンライン・ツー・オフライン(O2O)と言われています。スマホを持って店を訪れるだけで、30円~100円相当のポイントがもらえたり(ビックカメラや丸井など)します。また最近では、AR(拡張現実)という最新のIT技術が新しいマーケティング手法として使われてきました。実店舗にある商品に、様々なデジタルデータ情報を、スマホに重ね合わせて表示し、店舗への誘導を行います。ARによって、こんなことが可能になっています。例えば、駅構内でソフトクリームを食べたくなった時、現在の場所の映像を、スマホの写真に取って、設置された最寄りの掲示板に送るとその近くのソフトクリームコ-ナーの案内画像が、手元のスマホの写真に重なって、そこに誘導する映像が現れる。既に、複雑に入り組んでいるJR東日本東京駅「エキナカ」でのお客様への誘導や、施設案内に使用されています。スマホの絵をあしらった表示場板にスマホをかざす。すると、迷路のように通路や店舗が映し出されて、現在地が表示されるのです。

 ユニチャームは赤ちゃん向けの紙おむつで業績を伸ばし続けています。少子高齢化の時代、年々生まれる赤ちゅんが減少する中、業績はどうして伸び続けているのでしょうか。社会の変化と顧客のニーズを先読みし、赤ちゅんからお年寄り、そしてこれからはペット(犬など)へと、顧客ターゲットを変え続けているからです。素晴らしい事業変革モデルです。アップルの前CEOスティーブ・ジョブスはこう問いかけています。「美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい?そう思った時点で君の負けだ」。ジョブスの言わんとしていることは、お客様が本当に望むものを考えなさいと。多様化する顧客接点。この顧客接点でお客様のニーズをいち早く掴み、対応出来た者が、美しい女性を自分のものにできる。まさに企業経営も同じですね!